日本人の15歳の可能性を思う

大企業の悪い仲間意識が不正を引き起こす

 よくもまあ!こんなに続けて不祥事が明るみに出るなんて。東芝、日産自動車、神戸製鋼所、スバル、三菱マテリアル子会社、そして東レと日本を代表する大企業で、これほどまでに不正やインチキがまかり通るのか。さらに、インターネットのキーをたたくと、最近のものだけでも、富士ゼロックス、電通、三菱自動車、三井住友建設、東洋ゴム、カネボウ化粧品、オリンパスと、出るわ出るわ。

 日本のものづくり産業はどうしてしまったのでしょうか。競争力の維持のため、下請け企業に対して製造部門から始まり、管理部門においても、アウトソーシングの名のもと、どんどん外注されるようになりました。近ごろでは、「働き方改革」で大企業が時短した分の仕事が下請け企業に移転する一方とも。もっとも、下請け企業にとっては業務の拡大の機会となるはずです。もちろん、無理なコストダウンの要請だけは願い下げですが。

 業務の全体観を持たない大企業の社員が下請け企業に対し、「優越的地位の濫用」と同じような感覚で、つい不正に手を染めてしまったら、と想像します。

 そんな中、明るいニュースが飛び込んできました。15歳を対象に「他人と協力して問題を解決する能力」を測った経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査の結果が11月21日発表され、日本の得点は参加52カ国・地域中2位という成績でした。1位はシンガポール。学習到達度調査(PISA)を実施し、国内198校の高校生ら約6600人が受験しました。

 生徒はコンピューターを使い、複数の仮想人物とチャット形式で会話をしながら与えられた課題にチームで取り組むというものです(日本経済新聞、2017年11月22日)。

 近年は個人の学習能力が良くて10何位という成績に落ち込んできた日本ですが、グループ活動、協調性を重視する日本のお家芸の問題では、やはり強さを発揮することを証明しました。

 日本では、子どもは集団行動の中で役割分担や協調性の大切さを学んでいますが、他国に比べて他者と協同で課題にあたる力が高いことが裏付けられました。

 しかし、子どもはやがて大人になります。例えば、サラリーマン社会の中では、「空気」を乱せば、その組織の中で生きていけません。たとえ、不正を知っていても、指摘すれば左遷され、出世コースから外れてしまいます。こんな悪い仲間意識が、不正を引き起こしているのでしょうか。

 先の調査に関連して、浜野隆氏(お茶の水女子大学教授)は、「実際の社会では、価値観が全く異なる人との共同作業や問題が解決できない想定外の状況に陥ることもある。今回の調査で測れないこうした場面を乗り切る力も育てていく必要がある」(前掲紙)と述べています。

 私たちは、乗り切る力として「企業は社会の公器である」という市民社会の意識をどこまで深めるかが問われるでしょう。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2017年 12月 15日号より