年商・社員数5倍! 中小企業のニッチ戦略 (株)セーフティ&ベル 代表取締役社長 宇佐見 聡氏(東京)

【あっこんな会社あったんだ】第二創業

事業承継に向けた新規事業開拓

 (株)セーフティ&ベルは弱電設備(防犯、防災、通信、映像、集合インターホン)の企画・販売・施工・メンテナンスを行う会社です。宇佐見聡代表取締役社長(東京同友会会員)は2013年に事業承継しました。同社は宇佐見弘代表取締役会長(東京同友会会員)が1969年に創業し、工事事業をメインに展開していました。しかし、当時は下請けの仕事が多く、弘会長は脱下請けを目標にしていました。

 聡社長は1972年に双子の兄として生まれ、弟の敦氏(現取締役)に(株)セーフティ&ベルを任せ、自身は流通業の企業に就職し営業を任されます。「良いものを安く売るのは誰でもできる。良いものをより適正な価格で売る」という営業の役割にやりがいを感じ、同期の中でも注目される存在になっていました。33歳の時に独立を検討した際、弘会長より「独立するなら戻ってきてほしい」と頼まれ、(株)セーフティ&ベルに入社しました。

営業と技術のチーム連携で提案型施工を構築

 あいさつもできない社内の雰囲気に戸惑いながら、培ってきた営業の力で次々と新しい仕事を獲得していきます。しかし、現場の工事担当者からは「こんな段取りでは仕事ができない」などの不平・不満が出てきます。「仕事をつくりだしても文句を言われるのか、と疑問を感じていたこともあった」と宇佐見氏は振り返ります。

 対策として、施工部の責任者を営業部に異動させ、仕事を取ることの大変さを一緒に経験することで、営業に対する理解を深めていきました。それ以来、施工部の人たちも営業に歩み寄るようになり、また、営業部も積極的に施工部の現場研修に参加することで、お互いの理解が深まっていきました。今までは現場で「できない理由」を探していた人たちが、今では「どうしたらできるか」を考えるようになり、お互いに良い相乗効果が生まれています。

年商・社員数ともに5倍

 同社は売上高15・8億円、社員数約100名と、2008年からの10年間で5倍以上に規模を拡大しています。力を入れている事業はマンションオートロックインターホンのリニューアルです。インターホンは製造・販売している企業が2社のみというニッチな産業です。その2社とも提携してマンション管理組合などへインターホンリニューアルの積極的な営業をかけています。

 東京都はオートロック式の割合が最も高く、ビルや共同住宅の戸数も他県より多いので、広い市場があります。また、マンションのオートロックの場合、1世帯でも設備が故障すると、すべてのインターホンをリニューアルする必要があり、今後の期待も高いと言います。

 新規事業であるインターホンのリニューアルで提案型の営業スタイルに切り替えたことで、他社との差別化を図り大きな飛躍へとつなげることができました。

 「事業を拡大する上では、社員の力が必要です。経営指針セミナーを受講し『社員と周りの人すべてが幸せになれる会社を作る』という思いに至りました。社員一人ひとりが働く意味を真剣に考えられるようになってほしいという思いは会長から受け継いだと感じています」と話す宇佐見氏。

 働きやすさを考え、開放的なフリーデスクとなっている社内にはいきいきと働く若手社員の姿が目立ちました。

(株)セーフティ&ベル会社概要

創業:1969年
資本金:2,000万円
年商:16億円
従業員:93名(内女性29名)
事業内容:電気通信工事業
URL:https://www.safety-bell.com/

「中小企業家しんぶん」 2018年 10月 15日号より