「働き方改革」の第一歩(6)―事例編  明るい未来を描くために レイバーセクション 所長 特定社労士 藤浦 隆英(東京)

 中同協は『働く環境づくりの手引き~経営指針を全社一丸で実践するために~』を発刊しました。今回から作成に携わったプロジェクトのメンバーが『働く環境づくりの手引き』の意義や活用事例などを紹介します。

 今回は、私がプロジェクトメンバーとして『手引き』作成にかかわる中、テストケースとして、東芳紙業(株)(境和彦代表取締役、東京同友会会員)の社員の皆さんと働く環境づくりと就業規則改定に取り組んだ事例をお伝えします。

 東芳紙業(株)では社内環境を改善するための社員委員会を組織しており、今回は私がこの委員会に参加する形で進めていきました。

 会社の現状としては、特に大きな問題はなく、社員の皆さんも特段の不満を持っていない、という状況でした。賃金制度も整っており、将来設計もしやすい環境と言えます。

 しかし、10年後のビジョンについて話しあってみると、介護や孤独な老後などのイメージが先行して、夢や挑戦など、明るい未来を思い描くといった内容がなかなか出てこない状況が続きました。

 そのような中でも話しあいを進めるうち、だんだんとアイデアが生まれてきました。「長く働ける会社」「個人に合わせて硬直化しない体制」「介護や病気治療などとも両立できる働き方」「休みをとるためにもフォローしあえる体制」など、前向きなアイデアが多く、人員不足の解消や、生産性向上、チーム制の導入、情報共有についても活発に話しあわれるようになっていきました。

 やがて、若い新入社員の定着がよくないとの問題意識が共有されるようになり、教育体制の構築が大きなテーマとして上がってきました。

 最終的には全社員への説明会において、働く環境づくりの指針が、経営指針書と一体のものとして説明され、就業規則へも段階的に反映していくこととなりました。

 『手引き』では、10年ビジョンの作成が出発点であり、大きなポイントとなります。社員の皆さんから明るい未来像を引き出し、前向きな方針につなげていくことが、『手引き』実行に際しての重要なポイントとなるでしょう。

「中小企業家しんぶん」 2019年 7月 15日号より