【同友会景況調査(DOR)概要(2019年4~6月)】景気、崖っぷちに向かう動き示す~製造業と商業は悪化の一途

〈調査要項〉

調査時点 2019年6月1~15日
調査対象 2,380社
回答企業 942社(回答率39.6%)(建設169社、製造業288社、流通・商業284社、サービス業192社)
平均従業員数 (1)39.9人(役員含む・正規従業員)(2)23.8人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。
 好転・悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考えで作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

国内景気の基調判断は下げ止まり

 日銀の6月短観(全国企業短期経済観測調査)は中小企業全産業の業況判断指数は6と3月調査と比べて4ポイント減少、次期もさらに減少を見込んでいます。内閣府が5月に発表した3月の景気動向指数(CI、2015年=100)からみた国内景気の基調判断は6年ぶりに「悪化」となり、4月もし2カ月連続で「悪化」となったものの、5月の指数は「下げ止まり」となりました。しかし、貿易摩擦が解消に向かっているわけでもなく、個人消費も10月の消費増税を控えて腰折れ懸念もあり、先行きは厳しい状況が続きそうです。

 DORでも業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は3→△2と5ポイント悪化、足元の業況を示す業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)も4→△3と水面下に落ち込みました。

 次期(2019年7~9月期)も業況判断DIが△2→△2、業況水準DIは△3→△2と中小企業景気の低迷が見込まれています。(図1)

製造業、流通・商業がマイナス水準に

 業況判断DIを業種別でみると、建設業が11→2で9ポイント悪化、製造業が△4→△7で3ポイント悪化、流通・商業が△1→△7で6ポイント悪化、サービス業が13→10で3ポイント悪化しました(図2)。地域経済圏別では北海道・東北(1→1)、中国・四国(4→12)以外の地域で悪化しました。企業規模別では100人以上のみが好転、それ以外の規模は横ばい・悪化で水面下に沈んでいます。

生産性、採算も悪化傾向に

 売上高DI、経常利益DI(いずれも「増加」-「減少」割合)は5→0、△1→△5で、2期連続での悪化となりました。それに連動するように生産性を示す指標の1人当たり売上高DIと1人当たり付加価値DI(「増加」-「減少」割合)も6→△4、1→△6と大きく悪化しています。

 また、業種別に今期の価格動向をみると、製造業では仕入単価の低下に加えて売上・客単価が上昇した一方で、サービス業の仕入単価上昇は厳しさを増しているなど、大きな相違も見られます。次期は、仕入単価は低下すると見込まれていますが、売上・客単価もわずかに低下との見方が強く、単価の側面から収益に与える影響が懸念されます。

人材不足感が緩和

 正規従業員数DI(「増加」-「減少」割合)などの雇用面は弱含みながらプラス側を維持、このところ強い不足感が継続している人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は△51→△43と緩和が見られました。中でも製造業(△41→△27)の緩和が目立ちました(図3)。

 なお、働き方改革の影響もあるのか、所定外労働時間DI(「増加」-「減少」割合)は2017年1~3月期以降10期連続でマイナス側を推移しています。

設備投資は一定水準を維持

 設備投資実施割合は35.2%と安定した水準を保っていますが、前期に計画した割合を下回る状況が続いているほか、実施目的で「維持補修」が7ポイント増加して43%となるなど、勢いは見られません。「当面は修理で切り抜ける」「自業界の先行き不透明」「採算の見込みがない」を理由に設備投資を見合わせる企業も少なくなく、厳しい状況が伝わってきます(図4)。

金融動向変調の兆し

 金融動向にも変化が見られます。資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合)は16→8と縮小しました。建設業を除く業種、北海道・東北を除く地域、従業員数100人以上を除く規模の企業で資金繰りがタイト化し、業種、地域、規模による差が出てきています。

 また、金利の上昇圧力や資金の借入難度も高まりつつあり、とくにサービス業の借入金利の上昇が目立っています。融資引き締めの話題も聞かれるようになるなか、今後の動向に注視する必要があります。

人材確保に注力しつつ景気悪化への対策を

 経営上の問題点は、引き続き「従業員の不足」が高い割合を継続していますが、今期は「民間需要の停滞」がすべての業種、地域、企業規模で増加したことが特徴といえます。10月からの消費増税を控え、すでに需要停滞を警戒しつつある中小企業景況、危機管理という側面からも対策を講じ、地域経済と雇用の担い手としての役割を果たしていきましょう(図5)。

〈付加価値向上の要は社員にあり! 会員企業の取り組みから〉

○女性パート社員2人を採用し工事原価を常にチェック、把握できるように体制を整えた。パート社員2人は育児中だが、働きやすいように調整することにより、将来は正社員へ登用するように意欲的に働いている。『働き方』を考えるきっかけになった。(青森、建設業)

○損益構造の変革を全社で取り組んだ。分析結果や変革の取り組みの中で見えてきた課題や方向を次年度の経営方針に盛り込み実施する。(富山、建設業)

○週休増加、働き方を見直すため、BCPを使って業務の洗い出しを行っている。(岡山、建設業)

○社員教育により顧客満足度を上げる。社員の中途退社がない会社づくり。(広島、サービス業)

○半期に1度の人事考課、個人面談を実施した。より社員の自主性、本音が引き出せるように改善した。職場討論で上半期の検証、改善を行った。上半期のマイナス分を下半期で挽回しようというムードは出てきた。販促策も含め社員の意見を生かして黒字化を図りたい。(島根、流通・商業)

「中小企業家しんぶん」 2019年 8月 5日号より