内外需総崩れの景気後退を乗り切る~消費増税への耐久力をどう発揮するか

 ショッピングセンターを中心に約100店舗を展開していた子ども服販売店「マザウェイズ」が7月に自己破産手続きの開始決定を受けました。フリルやリボン、キャラクターの絵柄などを施したデザインの独自企画商品を販売し、子育て世代のママの間で広く人気を博してきました。

 マザウェイズの売上高は、前年同期比でそれぞれ10%以上も減少。同社は金融機関から多額の借り入れを行ってきましたが、売り上げが減る中で支払い利息負担ものしかかり、資金繰りが厳しくなったようです。急速な少子化が進む中、子ども服市場は限られたパイのシェアの取りあいで価格競争が年々激化しているのが実情です。ここ1、2年は、しまむらが展開する子ども服専門業態「バースデイ」や西松屋も、既存店売り上げのマイナスが続く苦しい状況のようです。

 そこで気になるのが、2019年10月に予定されている消費税率引き上げによる景気への影響です。中同協・緊急アンケート(「中小企業しんぶん」2019年5月25日号)によれば、「消費税率引き上げで、景気はどうなると予想されますか」との問いに、「景気が悪くなる」が46・5%、「景気がかなり悪くなる」が22・9%と実に約7割の同友会会員が景気悪化を予想しています。

 では、どのぐらい悪化するのでしょうか。それを推し量るレポートを見つけました(斎藤太郎「消費増税への耐久力を点検する」ニッセイ基礎研究所、2019年7月12日)。

 今回の税率引き上げ(8%→10%)は、前回(2014年4月、5%→8%)より引き上げ幅が小さいこと、飲食料品および新聞に対する軽減税率の導入、教育無償化、キャッシュレス決済時のポイント還元など大規模な増税対策が講じられることから、景気への悪影響は前回よりも小さくなる公算が高いようです。

 前回は増税前の駆け込み需要によって2013年度の実質GDP成長率が0・8%押し上げられる一方、その反動と物価上昇に伴う実質所得低下の影響で2014年度の実質GDP成長率は△2・3%押し下げられました。今回の増税による実質GDP成長率への影響は、2019、2020年度ともに△0・1%とそれほど大きなものとはならないと考えられます。

 ですが、足元の景気の基調は個人消費を中心として前回の増税前に比べてかなり弱いのです。消費税率引き上げの3年前から駆け込み需要が本格化する前(半年前)までの民間消費は前回増税前には年平均で2%以上伸びていましたが、今回はゼロ%台の低い伸びにとどまっています。

 そして、最後に同レポートは、「米中貿易摩擦が一段と激化する可能性があることから、輸出の低迷は長期化するリスクがある。輸出の回復が遅れれば、2019年度後半以降の日本経済は内外需総崩れとなり、景気後退の可能性が高まるだろう」と言い切りました。

 内外需総崩れの景気後退のなか、耐久力をどう発揮するか。個々の経営力が問われています。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2019年 8月 15日号より