世界初ブラックホール撮影成功の裏にエレックス工業(神奈川)の功績が

 4月10日、「世界初ブラックホール撮影成功」のニュースが世界中を駆け巡りました。実は、その裏側にはエレックス工業(株)(内藤岳史代表取締役、神奈川同友会会員)の活躍がありました。神奈川同友会機関誌より転載して紹介します。

 ブラックホールは、アインシュタインの一般相対性理論を基に100年前に予言されていた、宇宙で最も極限的な天体です。重力が非常に強く、光さえも脱出できないため、これまで観測は極めて困難でした。

 今回撮影に成功したのは、地球から約5500万光年(1光年=約9兆4600億km)離れた、おとめ座銀河団の楕円銀河「M87」の中心部にあり、太陽の65億個分の巨大質量を持つブラックホールです。しかしながら、非常にコンパクトで、これまでは直接観測することは不可能でした。

 そこで今回は、世界8カ所(チリ2カ所・スペイン・ハワイ2カ所・メキシコ・アリゾナ・南極)の電波望遠鏡をつなぎ、圧倒的な感度と解像度を持つ地球サイズの仮想的な望遠鏡を作り上げる「イベント・ホライズン・テレスコープ」プロジェクトが立ち上げられ、200人以上の科学者が参加しました。

 これには、超長基線電波干渉計(Very Long Baseline Interferometry:VLBI)という仕組みが用いられています。世界中に散らばる望遠鏡を同期させ、地球の自転を利用することで地球サイズの望遠鏡を構成するものです。今回の観測では、VLBIにより解像度20マイクロ秒角という高い解像度を実現していますが、これは人間の視力300万に相当し、月面に置いたゴルフボールが見えるほど高い解像度です。

 このVLBIの開発・提供を、国立天文台との全面協力に基づき行ってきたのがエレックス工業(株)です。

 さらに、南米チリにあるアルマ望遠鏡をVLBI望遠鏡として利用するために、光ファイバーの波長多重による光伝送装置が用いられました。これは、国立天文台との協力でエレックス工業(株)が開発したものです。アルマ望遠鏡は観測に参加した望遠鏡の中で最も感度が高く、イベント・ホライズン・テレスコープ全体の感度の向上に大きな貢献をしたと言われています。そのデータを山頂のアンテナ群から山麓施設に伝送する装置に使われているのが、エレックス工業(株)が共同開発した光伝送装置です。

 今回の撮影成功を得て、今後の天体観測にも、画期的な成果が次々に生み出されるかもしれません。大きな期待が膨らみます。

〈文:(有)マス・クリエイターズ 佐伯 和恵〉

神奈川同友会会報誌「doyu kanagawa」2019年6月号より転載

「中小企業家しんぶん」 2019年 8月 25日号より