【あっ!こんな会社あったんだ】経営指針 自社のあり方を問う経営指針

 企画「あっこんな会社あったんだ」では、企業経営にかかわるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介。今回は「経営指針」をテーマに、乳菓子屋(株)、フクシマ建材(株)の実践について紹介します。

乳菓子屋(株) 代表取締役 佐藤 憲史郎氏(熊本)
フクシマ建材(株) 代表取締役 福嶋 智和氏(熊本)

経営理念で差別化

 熊本市中央区で洋菓子店を営む乳菓子屋(株)代表取締役の佐藤憲史郎氏は、2017年に「経営指針を創る会」で成文化した経営理念を基に商品の差別化に成功しました。当時、東京でブームになっていたガトーショコラを自社でもつくりたいと思い商品づくりに着手。どう他社商品と差別化を図るかで悩んでいた時に、作成した経営理念にヒントを見つけます。

 経営理念にある「世の中に幸せ」という言葉には、「商品を通して地元を元気にしたい」、「社員に幸せになって欲しい」との思いが込められています。その思いが地元食材の使用や、独立希望の社員をガトーショコラ専門店の店長に起用するなどにつながりました。結果、「地元食材にこだわったガトーショコラ」をコンセプトとした新商品がメディアにも取り上げられ、オープンと同時に完売するほどの人気商品となりました。

 また今年の10月には、ガトーショコラ専門店の店長の出身地である天草に「おやつ家 華音」をオープン。その店にも乳菓子屋の経営理念が継承され、地元の食材にこだわった、世の中が幸せになるお店づくりにまい進しています。

経営指針で自社の強みを獲得

 窓ガラスを中心としたリフォームを手掛けるフクシマ建材(株)代表取締役の福嶋智和氏は、同友会に入会するまで自社の強みを考えたこともありませんでした。発注があった仕事だけを淡々とこなしていけば大丈夫だろうと思っていました。しかし、「経営指針を創る会」に参加した際「自社の強みは何か」と問われた時に何も答えられなかったことで、このままでは生き残っていけないと焦りを感じました。

 そこで以前から気になっていた全国でも少数の会社でしか扱っていない防音窓ガラスに注目しました。大手でもなかなか取り扱えない商品でしたが、何度もメーカーに直談判しに行ったことで福嶋氏の熱意が伝わり、研修を受けることでようやく取り扱えるようになりました。

 それ以降、自社の強みを明確に打ち出す戦略が功を奏し業績も着実にあがっています。今後は、リフォーム全般の仕事も増やしていきたいと意気込んでいます。

 改めて経営指針の重要性とそれを軸に実践することが大切だと感じる2社の事例でした。

 熊本同友会 事務局員 守田雅規

「中小企業家しんぶん」 2019年 11月 15日号より