悲しみを乗り越えて同友会で経営を学ぶ 重バラ園 代表者 重 研太郎氏(佐賀)

【あっ!こんな会社あったんだ】経営指針

 企画「あっこんな会社あったんだ」では、企業経営にかかわるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介。今回は「経営指針」をテーマに、重研太郎氏(重バラ園代表者)の実践について紹介します。

 今回紹介する重バラ園は、佐賀県唐津市浜玉町でバラの切り花の生産・販売を営んでいます。従業員数は本人と重氏の父である隆氏との2名ですが、障害者を施設外就労で常時3~6名を受け入れており、いわゆる農福連携に積極的に取り組んでいる企業です。

 しばらくは特に経営というものを深く考えることなく仕事をしていましたが、お母様が亡くなられた悲しみで苦しんだ時期には、「経営者としてやっていく自信を失いかけた」といいます。

 そうした中で同じ農家の仲間から同友会に誘われたことがきっかけで本格的に経営を学び始めました。経営指針(営農指針)をつくったことで将来に向けた自信も取り戻し、今後は切り花の生産以外にも事業を広げていくことを考えています。

 1つはエディブルフラワー、つまり食べるバラの生産です。栄養素の豊富なバラを食べてもらい、香りをより一層楽しんでほしいと重氏は言います。

 もう1つは観光バラ園づくりです。地元の鏡山という景色のよい場所にバラ園をつくり、人が集まる場所にしたいというのが重氏の夢です。

人のプラス面だけを見る

 障害者と働くのは実際には大変だそうです。ある1つのことを覚えてもらうのにも時間がかかります。例えばバラ枝の剪定(せんてい)にはいくつかの段階のスキルが必要だそうですが、ある段階のスキルを覚えて、次の段階にスキルアップすることは容易ではないといいます。その点をどう克服していくかが大きな課題です。

 そうした課題がありながらも、障害者と一緒に作業をする上で心掛けているのは、人のプラス面だけを見るということです。そうしたマインドで人と接すれば、自分だけではなく、社員全体の幸せを考える視点に立てます。

 重氏は自分自身のみならず、社員や会社全体の視点からものごとを考えることを同友会運動を通じて日々学んでいました。

会社概要

設立:1980年
年商:1,680万円
事業内容: バラの花の生産・販売
従業員数:2名(就労支援施設外就労 常時3~ 6名)
所在地:佐賀県唐津市浜玉町浜崎202

「中小企業家しんぶん」 2020年 1月 25日号より