台風19号と気候変動~個人レベルのライフスタイルの転換を

 台風19号の全国の中小企業関係被害額は4,767億円(2019年10月29日現在、中小企業庁)にのぼり、被害甚大です。農林水産関係の被害額は38都府県2,544億円(11月12日現在、農林水産省)。農業経営に携わる会員企業にも大きな被害が出ています。

 とりわけ、JR東日本の浸水した長野新幹線車両センターで新幹線が半分泥水に浸かっている姿が印象的ですが、北陸新幹線の車両8編成の廃車費用等に約165億円も掛かっているそうです(「日本経済新聞」2020年1月31日)。

 さらに、損害保険各社の保険料の支払いが滞っています。台風15号、台風19号と相次ぐ被害で修理業者が不足しており、修理見積もりが終わらないため。日本損害保険協会によれば、保険料の支払金額は約7,467億円(2019年12月9日時点集計)。最終的には1兆円に到達しそうです。

 自然災害による保険料の支払いは、前年の西日本の災害と合わせて2年連続で1兆円規模の歴史的な水準になる見通しです。

 まさに、台風19号来襲ショック。治山治水の想定レベルをはるかに超える猛烈な台風でした。このような台風凶暴化の原因は、太平洋の海水温上昇によって台風が日本に接近するにつれて凶暴度を増したことにあると推察されます。あのクラスの台風が毎年日本に上陸すると考えるべきだとの専門家の意見も。であるならば、わが国の地球温暖化対策を再検討する必要があると思うのです。

 ヨーロッパでは、熱波、洪水、渇水、異常気象が頻発しています。南米アマゾンやアメリカ、オーストラリアでは何カ月も続く大規模な森林火災は原因が気候変動に密接に関連しており、今後も同じような規模の森林火災に見舞われる可能性があると言われています。

 このようなスーパー異常気象にどう対処するのか。COP25は合意に至らず、次の会議まで先送りになりましたが…。

 日本政府は2019年6月に「脱炭素社会ビジョン」を閣議決定しました。ただし、方法は曖昧、実現性に問題があると専門家は指摘しています。そして、個人に痛みを迫る厳しさも欠けているようです。

 例えばドイツ。政府は2019年9月、向こう5年間で6兆円を投入する政策パッケージをまとめました。2030年に温室効果ガスの排出量を1990年比で55%削減をめざします。ガソリン車を運転すると、CO2排出量に応じて運転者が費用を払う。つまり、燃料代の値上げ。航空機に乗ると、航空税をとられます。

 個人的に厳しいと思うのは、2026年から石油暖房が禁止されること。電気暖房への転換を促進するために、暖房効率引き上げのための家屋改修には補助金を支給するそうですが。このように、個人レベルのライフスタイルの転換までを要求されるのです。

 同じままでの要求は難しいかもしれませんが、ライフスタイル転換を要求される時代であることは間違いないと言えます。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2020年 2月 15日号より