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連載「エネルギーシフトを考える」第1回「エネルギーシフト(ヴェンデ)の先にある未来」~岩手同友会の実践から

迫られた生き方、考え方の変革

 2013年11月の中小企業家しんぶんに掲載された記事からは、中同協の欧州視察から帰国直後の興奮した様子が伝わってきます。

 「初めての現地集合、現地解散で行われた中同協ドイツ・オーストリア視察は、全国から28名が参加し、9日間の日程で行われました。視察にあたって当初目的としていたのは、ドイツ、オーストリアのエネルギー政策と街づくり、ヨーロッパの中小企業憲章の実践の現場に直接触れ、学ぶことでした。しかし現地に立った瞬間に受けた衝撃は、まったく予見しないものでした。『エネルギーシフト(ヴェンデ)』へ向けた生き方、くらしの豊かさに対する、考え方の違いに驚くことになります。…」岩手同友会がエネルギーシフト(ヴェンデ)研究会構想を立ち上げたのは、6年半前の2013年の暮れ、中同協の欧州視察帰国直後のことです。以来学習会の開催数は100回を優に超え、合計6度の欧州視察で経営者だけではなく幹部社員や大学生を含め、のべ85名の参加者を迎え開催してきました。

 しかしスタート当初は岩手からの声を発信する度に、「エネルギーシフトで何でも解決できる訳ではない。殊更(ことさら)に欧州の事例を取り上げるのはどうか」と苦言を呈され続けました。熱く語れば語るほど、地元の行政機関も遠ざかる。学習会への参加者も数えるほどでした。

 それでもこうして現地に何度も赴き、実際に自分の目で見て、これからの人口減少、少子高齢、更に震災復興と三重に重なる地域の苦境に、必ず必要とされる中小企業の未来像があると確信を持ち、コツコツと実践してきました。なぜならそれは決して単なる方法論や欧州賛美ではなく、東日本大震災という人間の命が目の前で何千人と失われていく惨状のなかで経験した、極限の閉塞感の中で生まれた、私たち自身の生き方、考え方の変革の、解決のヒントがそこにあると、気づいていたからでした。

経営者としての価値観の変化

 あと3週間ほどで東日本大震災の発災から丸9年を迎える陸前高田。今日もコミュニティホールではいつもながらのにぎやかな気仙支部例会が始まりました。震災前には常に4~50名は集っていた毎月の例会もこの9年の間、10人ほどで1つのグループを囲むことが多くなりました。しかしふと見ると、今日の参加者の大半、9名が岩手同友会のエネルギーシフト(ヴェンデ)欧州視察に参加した同窓メンバーです。その密度の高さに驚かされます。

 報告者の(株)エムデイワン・まごころみるく代表取締役の下村善勝氏は、経営指針の実践報告の最後に付け加えました。「宅配の牛乳屋さんがどうしてエネルギーシフトでドイツにと思うでしょう。実は私もそう思っていました。事務局に強く誘われて最初は付き合いと思って参加しました。自分の生き方や考え方にこんなにも大きな影響を与えるとは思ってもみませんでした。帰国後、屋根に太陽光発電を上げました。それも1つですが、大きいのは感受性、経営者としての価値観が変化したことです。一人ひとりのお客様の顔が想像できる『まごころみるく』という愛称が生まれたのも、地域における自社の存在意義が大きく変わって見えた。そうした背景があります」

 終了後、場所を変えての食事会では、中同協5万名会員へ向けた支部目標達成の話題は当然のことながら、それ以上に熱く議論が深まったのは「気仙の森をどのようにして後の世代に引き継ぐか」。そして今年陸前高田で立ち上がる、発酵食の文化を広げ後世に伝承する「発酵の里・カモシー」についてでした。

岩手同友会事務局長 菊田 哲

「中小企業家しんぶん」 2020年 3月 5日号より

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