コロナ禍を共助・連帯の力で乗り越えよう~2021年の年頭社説を読んで

 2021年がスタートしました。本欄の役目は、新聞の年頭の社説を読み、年の課題を考えることですが、今年は新聞全紙が新型コロナウイルスに集中しています。当然のことのようですが、風景が一変しました。

 全国紙各紙のタイトルを見てみましょう。「平和で活力ある社会築きたい」(読売新聞)。「核・気候・コロナ 文明への問いの波頭に立つ」(朝日新聞)。「再生の可能性にかける時」(毎日新聞)。「2021年を再起動の年にしよう」(日本経済新聞)。「コロナ港から船が出る」(東京新聞)。

 各紙に共通しているのは、2020年に私たちが対峙した社会問題は、コロナ禍のために新たに生じたわけでなく、もともと存在していた弱点が顕在化したに過ぎないという主張です。従って、各紙は、前向きな展望をそれぞれ提示しています。

 例えば、日本経済新聞。「米中対立、貧富の格差拡大、資本主義の揺らぎなど、かねて指摘されていた問題が、コロナ禍でより先鋭化している」とし、「経済」「民主主義」「国際協調」の3つに重点を置きたいとしました。「経済」では、コロナ禍は業種などで格差が生じやすいが、コロナ前に戻すだけでなく、デジタル化、雇用市場改革など新たな社会を切り開く戦略が必要とします。また「民主主義」では、危機には非民主的な権威主義の方が強いという見方がありますが、日米欧などが問題を民主主義的な手法で解決し、自由な資本主義を磨き直すとしています。さらに「国際協調」では、バイデン氏が協調路線に回帰する意向を示しているとし、その試金石となるのが、コロナ対策と地球温暖化対策とします。

 朝日新聞の社説は感動的です。昨年、長崎原爆資料館に掲げられた「長崎からのメッセージ」は、核兵器、環境問題、新型コロナの「世界規模の問題」を3つ挙げ、それらに「立ち向かう時に必要なこと、その根っこは同じ」と語りかけます。すなわち、「自分が当事者だと自覚すること。人を思いやること。結末を想像すること。そして行動に移すこと」。世界的な巨大リスクに立ち向かう時に、「メッセージ」は、なんと実践的で根本的なスタンスでしょうか。はたして世界は覚醒するのか。

 ブロック紙・地方紙のタイトルも触れておきましょう。「コロナの先へ/人と人の連帯を強めたい」(北海道新聞)。「コロナ禍の新年/共助広げ、苦難克服しよう」(河北新報)。「新しい年に/分断と憎悪を乗り越えねば」(京都新聞)。「明日への道しるべ/持続可能な未来への分かれ道」(神戸新聞)。「コロナ禍の年初に/足元から政治変えよう」(中國新聞)。「コロナ禍を越えて/一隅にも光が届く社会に」(西日本新聞)等々。

 このように、地方紙もコロナ禍による苦難に満ちた社会を共助・連帯の力で乗り越えようという主張です。

 新型コロナウイルスは予想外のわざわいですが、コロナ禍の克服は各紙とも、いつもより積極的な提案で揃いました。希望が持てる社説になりました。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2021年 1月 15日号より