経営環境に目を向けろ!!

 中小企業を取り巻く外部環境を考察する上で必要不可欠な統計データ。各企業が自社で調査した数値を公開しているものもあれば、国が統計データとして公開しているものもあります。国が作成するマクロ経済統計を中小企業のビジネスに活用するための視点やその手法について紹介します。

 これまでコロナ禍のビジネスチャンスに関する特集をお届けしましたが、本稿では経営戦略への統計の活用方法を紹介します。

 現在、コロナ禍で多くの経営者が苦境に立たされていますが、コロナ禍以前はどうだったのでしょうか? 仮に以前から経営環境が厳しい場合、収束した後もその局面が続く可能性が高いため、自社を取り巻く経営環境をしっかり把握して、対策を立てることが重要です。

 経営環境を把握するためには、GDP(国民経済計算)やIIP(鉱工業指数)のような統計以外にも金利、株価、為替などさまざまな指標が考えられます。しかし、あまり難しく考えず、まずは「自社の業界」、「主要取引先の業界」に関する統計を確認してはどうでしょうか。(図1)

 政府の統計は、目的に応じて作成・公表されるタイミングが異なります。最新の公表値も重要ですが、長期的な視点でデータを確認すると、大きな傾向をつかむことができます。「自社の業界」、「主要取引先の業界」が10年、15年といった長期間で右肩上がりなのか、右肩下がりなのかで、自社にとって経営環境が「追い風」なのか、「向かい風」なのかを判断することができます。

 それでは、具体的にデジタルカメラの事例で説明します。過去5年間(図2)、過去15年間(図3)の生産数量の推移を見ると、長期間で大きく減少していることが確認できます。このため、デジタルカメラを製造している会社、レンズやセンサーなど関連部品を供給している会社の経営環境は、コロナ禍以前から大変厳しい状況になっているのではないでしょうか。

 このように、自社の経営環境を把握するためには、長期の時系列データを確認することが第一歩となりますので、皆様も自社に関係する統計を確認してみてください。

 次稿では、自社の経営環境が追い風のとき、逆風のとき、それぞれどのような取り組みが必要になるのか、その分析手法を紹介する予定です。

経済産業省大臣官房調査統計グループ 田中 幸仁

「中小企業家しんぶん」 2021年 1月 25日号より