【アフターコロナ企業の挑戦】第6回 ゼロから1をつくることが大事 (株)吉村 代表取締役社長 橋本 久美子氏(東京)

長引く新型コロナ感染症拡大で日本経済や地域経済にも大きな影響が出ています。そんな中でも新規事業への参入など果敢に挑む企業があります。連載「アフターコロナ~企業の挑戦」第6回目はDoyuNewsで紹介した(株)吉村(橋本久美子代表取締役社長、東京同友会会員)の取り組みを紹介します。

「人がつくったテストで100点を取るよりも、ゼロから1(イチ)をつくることが大事」。(株)吉村の橋本久美子社長が社員に発し続けてきた理念が、コロナ禍の中で光を放っています。

「新型コロナの本質は変化であり、その難しい変化の波にいかに乗っていくか?」この1年の取り組みはまさにその1点につきます。日本茶の茶袋などのパッケージ製造に取り組む同社はテレワークに取り組みながらグラビア印刷工場で、印刷後に使用しなくなった透明フィルムを社員のアイデアで飛沫感染防止用のシートとして地域や顧客に無償で提供しました。

そしてコロナで最大の変化の波は「デジタル化」と「非接触」にあると見極め、「デジタル化の波に先頭切って乗っていく!Zoomを使い倒す!」と宣言し、積極的な展開を進めていきました。

Zoomを使い倒す

最初に取り組んだのは、社内でデジタルの習熟度を上げるZoomを使った企業見学会と得意先である茶業界を対象とした取り組みでした。

変化への対応を顧客にも広めていくお茶屋さんに向けて、デジタルを生かした集客法を伝授するZoom活用ワークショップセミナー(抹茶ラテ編)を展開し、巣籠りの中で絶品抹茶ラテをおうちでつくるワクワク体験を消費者目線で展開します。Zoomで新しい市場を生み出す商品として、「オンラインレッスン付き抹茶ギフト」を提案し、新しい売り方も提案していきました。

また、今までになかった新商品開発にも積極的に取り組みます。さらにはダマにならない抹茶シェイカーを開発。橋本氏自ら消費者と直に触れ合って反応を見るため千代田区市ヶ谷のバナナスムージー屋台の店頭に立ち、コラボレーションしての試験販売を実施しました。

クラウドファンディングに挑戦

また、急速に利用者を増やすクラウドファンディングに着目し、茶器のクラウドファンディングに挑戦しました。

工業デザイナーとチームを組んで2年! 500回試作した茶器を完成させ、クラウドファンディングでリリース。商品名は「刻音(ときね)」としました。マクアケに出品され、初日に目標金額を突破、最終的には目標額の14倍、700万円を集めました。「お茶の消費を増やすためには、急須以外の選択肢があった方がよい、コーヒードリップ男子を日本茶に曲がらせたい。そんな気持ちでつくった茶器です」と橋本社長は語ります。さらに、同じく接触しないお茶の入れ方として、カップに茶葉とフィルターがセットされた茶葉入り紙コップ「リーフティーカップ」を開発しました。

これからの消費は自律、他律、偶発の3タイプからなるといいますが、同社のモデルは自律消費(こだわり)、偶発消費(感動)を巧みに捉えながら、誰もが使える身近なデジタル媒体を最大限効率的に生かしている点にあります。社員がゼロから1(イチ)を考え自走する組織は実に自然にデジタル媒体を利器として使いこなすのです。

【会社概要】

設立:1954年
事業内容:食品包装資材の企画、製造、販売。
従業員数:230名(2019年9月現在)
所在地:東京都品川区戸越4-7-15
URL:https://www.yoshimura-pack.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2021年 3月 5日号より