東日本大震災から10年~試練を教訓に ピンチの時こそ一歩前にでること【宮城】

東日本大震災から10年が過ぎようとしています。目を覆うばかりの悲惨な状況の中、被災者でありながら中小企業家として自社と地域の復旧と再生に臨んだ姿と実践は「自社経営を止めない」「同友会の活動・運動を止めない」という教訓となりました。非常時において、(1)可能な限り正確に状況をつかむこと、(2)丁寧に情報発信すること、(3)本質的に物事を捉えること、(4)今やるべきことを明確に掲げることなどは、昨今の新型コロナウイルス感染拡大への対応においても貫かれたテーマとなっています。

当時、直接被災地となった岩手同友会、宮城同友会、福島同友会を支えようと、全国の各同友会では支援物資と義援金を募り、全国の緻密な連携から日本海側ルートで支援物資をどこよりも早く被災地に届けていただきました(地震発生から3日後に受け入れ体制が確立し、8日後には第1便が到着)。

被災した社員からの「社長が同友会に入っていて本当によかった」との言葉は忘れられません。今、宮城同友会が変わらずに活動を継続できているのは、あの時、全国の同友会会員の皆さまの支えがあったからです。感謝しかありません。本当にありがとうございました。

「非常時、ピンチの時こそ一歩前にでること」も教訓の1つです。震災直後のタイミングで「就職ガイダンス(2011年5月20日)」「合同企業説明会(2011年6月17日)」の開催に踏み切ったことは、後に行政や教育機関との関係づくりにつながりました。現在では学校7校が会員となり各校との連携協定締結も進みました。また、条例制定運動においても宮城県内で県(1)と市町村(35)の内、条例制定は16(44%)、同友会が直接関わった条例は6となり、被災地こそ条例制定運動が前進したことも特徴です。

東日本大震災も新型コロナウイルス感染拡大への対応も現象としては異なりますが、本質的な課題は変わっておらず、以前から抱えていた課題が先鋭化しているに過ぎません。人口減少や地場産業の衰退などの「地域課題」を自社の「経営課題」と捉えること、経営のプロである中小企業家が事業構想力・実現能力を発揮し「自社事業+地域事業」の両方を持つことが求められていると言えます。

「中小企業家しんぶん」 2021年 3月 15日号より