会員の自由記述欄に学ぶ 「経営上の努力」の記述には経営の示唆が

 DOR調査の最後に「経営上の努力」を記述するコーナーがあります。回答は自由記述だから実に面白い。多くの場合、どんな経営上の困難もコツコツと解決の方向性を持っています。

 今回は、2021年1~3月期から8つの記述をお借りし、考えてみました。

まずは、人材論から。

●限られた人員により売上増、利益増を達成するには、一人ひとりの能力(スキル面と同時にマインド面)の強化に尽きます。会議の際、考えること、発言することの訓練としてグループ討論を取り入れ、少しですが、効果が出ています(福島、流通・商業)。

●人間力を高めることに注力しています。人間力とは、顧客の情報以上の情報の提供と知恵の提供そして総合的な能力を高めることと考えています。具体的には、商品勉強会、新聞や専門書の読み込み、人への思いやり教育などです(大阪、機械・工具の販売)。

 グループ討論を取り入れるとは、どのような効果なのでしょうか。次は「新たな市場づくり」です。

●コロナ前の環境とは大きく変化があり、経営のあり方そのものを現環境に合わせて再構築する。顧客の変化、買い場の変化、物に対する価値観すべてに変化が生じている。以前に戻ることはないので再度構築していく(埼玉、流通・商業)。

●1~2年後の社会を見越し、新たな市場をつくり出すことに挑戦し続けている。「新しいドメインの開拓」と「新製品の研究開発」を試みており、短期・長期的な対策を打ち続け、改善を一歩ずつ進める(東京、産業用機械の開発・販売)。

 新型コロナが引き起こした変化に対して、経営のあり方はどう変わるのか。新たな市場をつくり出すことに挑戦するとは壮大です。

●今まで以上に、地域での認知度を高めるために、今扱っている商品の価値を伝えていく方法を強化するとともに、社員と共に、方法論を考えていきたい(宮崎、流通・商業)。

●行政への働きかけ(地元地域の業者は入札に参加できるように)、地方の1社が動いても変わらないが、地域が一体となればそのパワーは大きい。大手ゼネコンに負けないように、皆で力を合わせ努力する(静岡、建設業)。

●今後を考えると単体で何かするのではなく、町の観光地化に行政や町の人々・商工会と組んで、店舗の取得や改修、誘致に動かなければならない。当社としては、その中心となり動き、今後の定期安定収入を得られるビジネスモデルを考えている(三重、醤油・各種調味液製造)。

●地域に必要な事業を考えて、行動することである。このままだと地域が疲弊し、中小企業は立ち行かなくなる。早く地域社会が豊かになる事業を考えなければならないと思う(大分、建設コンサルタント、土木設計)。

 大手ゼネコンを動かすため、皆で力を合わせ努力するのもよいでしょう。最後の2つの記述のように、産業構造や社会の仕組みの変革、既存のビジネスモデルの転換を伴う訴えも社会へ響くようです。

 次の経営の光。コロナには負けていません。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2021年 5月 15日号より