【連載】強靭な組織をつくる!第4回 コロナ禍をうけて2

一般財団法人危機管理教育&演習センター 理事長 細坪 信二

 連載「強靭な組織をつくる!」。第4回目は、前回までに引き続き細坪信二氏(一般財団法人危機管理教育&演習センター理事長)より、「コロナ禍をうけて」をテーマに考えます。

 新型コロナウイルス感染症が拡大し続けている現状を踏まえ、改めて認識しなくてはならないのは、以前の状態には戻れないということ、覚悟が必要であり、今後、この状況が数年続くとなれば、現在の事業のあり方とやり方でこの先の経営が成り立つのかを考え直さなくてはなりません。世界規模で大きな変革が求められる状況下において「元通りに起動するのか?」それとも「新しく始動するのか?」「既存事業以外のプラスアルファを新たに生み出すのか?」、いずれかの選択が必須となるが、いつ決断するのかが経営者として問われていることである。

 昨年より、非接触・テレワークが進む企業の現場では、特に営業形態も大きく変化した。国内市場の縮小傾向から、海外市場に対してオンライン営業をするために、社員が語学を学び、積極的に新たな市場にチャレンジし、高齢者にとっては苦手意識のあるITを勉強するという取り組みが行われている。現状維持や従来の対面式の営業形態では今後ますます厳しくなっていくと予想される。

 新型コロナウイルス感染症が発覚した2020年1月から今日まで「変わる」ということにどれだけチャレンジをしたのか、社員が成長したのか、この1年間何もしてこなかった企業との間に大きな差が生じている。新型コロナウイルス感染症発覚前の状態に戻すだけではなく、業態変更や新規事業へ生まれ変わるための新しいチャレンジをする環境を、自らが創造しなければならないタイミングなのである。

コロナ禍で自社のBCPは機能しているか?

 「もし自分が飲食業や宿泊業、旅行業を営んでいたらこの状況をどうするのか?」という問いを、BCPを指導しているコンサルタントに投げかけ、ワークショップを実施し教育をしているが、的確にアドバイスできる方は多くはない。業界が違えども、一度、飲食業や宿泊業、旅行業だったら、という想定で「お客様がいなくなった(需要蒸発)」をわが事として考えてみてはいかがだろうか。従来型の地震等の自然災害を中心に作成したBCPや、担当者まかせにしていたBCPという名の紙づくりでは役に立たないということに気づく。「行動しなければ、現状を変えられない」。

 今必要なことは「先が読み切れないなかを前に進む」という自覚と、課題が山積する中で「どの課題から自社事業につなげていくか」という見極め、勇気を持って何を捨てるのか「継続しない」という優先順位を決めるビジネストリアージの視点が必要である。そのためには、ビジネスのインパクト分析やSWOT分析、シナリオプランニングをすることが不可欠である

 本業に「強み」があれば、仮に、自社で製造することが叶わないほどの大量受注に対して、同業他社(競合他社)に製造依頼をするのではなく、むしろ、もっとスキルを持った大企業と連携することも可能であろう。また、「強み」だけを生かすのではなく、自社の「弱み」を他社の強みと連携してアライアンスを組み、違う市場に参入することも考えられる。究極な「強み」がある事業であるならば、お客様が待ってくれるというブランドを確立する必要もある。いずれにしろ、1社単独で難しいのであれば、グループで取り組むこともでき、同じ方向を向いている仲間同士ならば、競合ではなく「お互い様連携」が可能となる。このように、自社の強みだけではなく、仲間の強みも把握しておき、中小企業家同友会で経営指針を共有しなから策定している関係は最適といえるだろう。

 今こそ、同じ志を持った経営者同士と全社員を巻き込んだ経営視点のビジネス継続(BC)に取り組むべきでないだろうか。

「中小企業家しんぶん」 2021年 6月 5日号より