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【中小企業を考える】第10回 中小企業は発展性と問題性の統一物

NPO法人アジア中小企業協力機構 理事長 黒瀬 直宏

 「中小企業を考える」をテーマにした黒瀬直宏氏(嘉悦大学元教授)の連載。第10回目は「中小企業は発展性と問題性の統一物」についてのレポートです。

中小企業の発展性

 ここで、今までの連載を振り返ります。連載第2回で、商品生産者には「販売の不確実性」という宿命があり、それを減らす鍵は「その場その場」で発生する専有度の高い「場面情報」の獲得だと述べました。そして、企業家活動とは「新しいこと」を行うことで、「新しいこと」は場面情報から得られるから、場面情報発見活動は企業家活動と言い換えられるとしました。

 第3回では、企業家活動には情報共有の有利性に基づく「中小規模の経済性」があり、これにより中小企業は大企業が発見できない場面情報を発見・蓄積し、情報参入障壁で囲まれた「独自市場」を構築すると述べました。情報参入障壁とはその市場で必要な専門的な技術情報などがないことが壁になって参入できないことです。「独自市場」では過当競争から免れられるため価格形成力がつきます。中小企業はこうして規模の経済性は効かないが企業家活動の重要度の高い需要多様分野で発展します。

中小企業の問題性

 一方、大企業体制の下にある中小企業は収奪問題、経営資源問題、市場問題という中小企業問題を課せられていると指摘しました(連載7、8、9回)。中枢産業部門を占める大企業は「販売の不確実性」を低下させるため、市場を管理しようとします。その第一が、価格・需要の管理で、これにより中小企業に「原料高・製品安」を押し付けるなどの収奪問題を引き起こします。この収奪問題による豊富な資金や大銀行との密接な関係が大企業に資金を集中させ、また、豊富な賃金原資や知名度が大企業に労働力を引き付けます。これが中小企業に資金・労働力不足という経営資源問題を引き起こします。大企業の製品的・地理的市場多角化(これも「販売の不確実性」を減らす効果があります)が中小企業市場への進出や国内中小企業への発注引き上げなどで、中小企業市場を縮小させる市場問題を引き起こすことがあります。こうした大企業の行動に起因する3つの中小企業問題が束になって中小企業の発展を抑制します。

中小企業は発展性と問題性の統一物

 本連載初回で「a.中小企業は大企業にない固有の発展性を内在させているが、b.その発現を妨げる固有の問題性も課せられている。そのため、c.中小企業は発展性と問題性の統一物になる」という見方を示しましたが、以上は、a.bについての説明です。これからcを説明します。

 重要なことは、大企業の市場管理行動は中小企業の発展を抑制するが企業家活動そのものを廃絶することはないことです。大企業が発展しても、企業家活動の舞台である「需要多様分野」は消滅しません。大量生産技術の発展で消滅した「需要多様分野」もありましたが、所得の上昇とともに絶えず新生しています。むしろ、現代では「需要多様分野」は以前より拡大しています。

 「需要多様分野」の存在は企業家活動の客体的条件と言えますが、主体的条件も廃絶されることはありません。大企業体制が形成されても、企業家活動に関する中小企業固有の有利性、すなわち、「場面情報」発見活動における「中小規模の経済性」は何ら変化しません。

 また、この有利性を発揮するのに必要な能力を持つ中小企業経営者も必ず生み出されます。このため大企業の市場管理行動は中小企業問題を発生させますが、企業家活動そのものを廃絶することはできません。

 その結果、中小企業は企業家活動の有利性という内生要因による発展作用と中小企業問題という外生要因による抑制作用を同時に受けます。

 中小企業は相対抗する作用により二重に制御され、「発展性と問題性の統一物」となるのです。連載第1回で紹介した問題型、積極型中小企業論は中小企業の一面だけを見ている部分理論という意味がこれでお分かりと思います。

 発展性と問題性を共に中小企業の本質として「統一理解」する複眼的中小企業論が中小企業に対する正しい見方なのです。

「中小企業家しんぶん」 2021年 6月 15日号より

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