コロナ禍の学生の就職意識の変化―地元や地域で働きたい学生が増加

コロナ禍の中で、学生の就職活動がオンラインとなり、会社訪問して現場を体験したり、社内や仕事の雰囲気を感じ取れる機会が減っていると聞きます。社長や求人担当の方と対面で話し合うことも減り、以前にも増して働くことへの期待がありながらも不安も大きくなっているのではないかと思います。

 オンライン就活は今までの就職活動に変化をもたらしています。首都圏や関西圏など大都市圏に就職したい地方の学生が、就職活動で大きな負担となる交通費や移動時間が削減され、オンラインによって会社説明会や面接に参加しやすくなっている状況となっています。コロナ感染拡大で、地元に帰りたい、地方で働きたいという大都市圏に暮らす学生にも同様のことが言えます。

 このような状況は、マイナビが発表した「2022年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」(2021年5月11日)で、地元に就職を希望する大学生が5年ぶりに増加に転じたことでも明らかとなりました。調査によると、「現時点で地元(Uターンを含む)就職を希望するか?」という質問に、「希望する」が31・3%、「どちらかというと希望する」が26・5%と回答し、57・8%の学生が地元就職を「希望する」としていました。14年卒の69・8%から徐々に地元に就職を希望するという回答の割合が減少しはじめ、昨年のコロナ禍で就職活動を迎えた21卒の調査では54・9%と近年では最も「希望する」割合が低くなっていました。

 地元の企業に働きたいと思う学生が増加に転じる中、来年の新卒採用は山場を迎えています。「キャリタス就活2022学生モニター調査」(2021年7月)の7月1日時点の就職活動調査では、22卒就活内定率は80・1%とあります。前年の77・7%(21卒)は上回ったものの、コロナ前の20卒の84%より下回っています。就職活動を継続している学生は32・6%と、まだまだ学生は自分に合う会社を求めています。

 そのような中で、オンラインだけでは就職を決めるのに不安があるとも聞きます。各同友会での共同求人活動では、学生と対面で話し合うことを重視し、リアルでの合同企業説明会を開催し、学生に企業の魅力を熱心に伝えています。参加した学生からは「オンラインの就職活動が多く、社長と直接会って話し合うことができ勉強になった。リアルでの開催に感謝している」との感想があると聞きました。求人活動でオンラインを活用することも重要ですが、中小企業で働く魅力を学生にリアルで伝えることの重要性がわかります。

 中同協共同求人委員会では、昨年12月に全国の中小企業の魅力を伝えるために「中小企業サミット」を開催しました。地元で働きたいと思う学生に働く場をつくるのが中小企業の役割です。今年も12月13日に「第2回学生と先生のための『中小企業サミット』」を開催します。採用活動にとどまらない中小企業の魅力を発信するよい機会ですので、参加を検討してはいかがでしょうか。

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「中小企業家しんぶん」 2021年 7月 15日号より