【会社を成長させる人材採用!知っておきたい役立つポイント】採用活動を行う前にやるべきこと

(株)エム・ソフト 顧問・社会保険労務士 西 秀樹(東京)

 コロナ禍での採用・就職活動では企業も学生も手探りが続いています。そんな中で大きく変化している採用活動の基本を今1度確認し、人を生かす経営の実践につなげていくことが大切です。連載「会社を成長させる人材採用! 知っておきたい役立つポイント」の第2回目は、「採用活動を行う前にやるべきこと」です。

 職業安定法第5条の3では、求人情報の明示等に係る法的責任は募集を行う求人企業・事業主にあり、職業選択の自由や均等待遇が謳(うた)われています。「募集主は従事する業務内容や賃金、勤務時間、その他労働条件を明示しなければならないこと」と定められています。

 募集主である事業主は、従業員の労働条件の中でも極めて重要な賃金に関すること、勤務時間に関することについては、自社の就業規則・賃金規程でしっかりと法令を遵守したものを作成しておく必要があります。確かに就業規則は従業員10名以上の企業が作成し労働基準監督署に届け出る義務があり、10名未満の企業は作成・届出義務がありません。では、10名未満の企業が求人票を作成するにあたりその根拠となる規則がない場合、どうでしょう。求人票が作成できないことになります。まずは、採用活動を行う前に就業規則などを作成しておきましょう。

 次に、昨今の学生は経営理念や社風を企業選びの際に重視しています。共同求人活動は大企業と違い、経営者自らが率先して採用活動を行っています。この取り組みは、大きな武器になるのではないでしょうか。合同企業説明会で、会社説明会で、経営者自らが自社の経営理念や会社のビジョンを熱く語ること、その経営者の姿を見て、感じて応募したいと思うのではないでしょうか。学生がこの企業に応募したいという動機をつくりあげるのは、経営者のあなたです。

 経営者が経営理念を語り、自社の理念に沿った「人物像」を描く、その描いた人物像が真の「採用基準」ではないでしょうか。よく求める人物像に、「明るく元気な人」「やる気のある人」「前向きな人」「声が大きい人」などを求人票の「求める人物像」で見かけます。果たしてこの条件が自社の経営理念、人材戦略に沿ったものなのか、また、面接選考で判断できるものなのか今1度考える必要があると思います。

 求める人物像と募集する職種が求める「職務能力」とは違います。学生が就職活動前に「職業理解」を行うように、企業も採用活動前に「募集職種の職務能力」を洗い出しておくべきでしょう。

<プロフィール>西 秀樹氏

神奈川大学法学部法律学科卒業。旅行業界人事、外資系コンサル会社を経て、現在は、新卒採用、人事評価制度策定、就業規則などの作成を主たる業務としている。

「中小企業家しんぶん」 2021年 7月 15日号より