【同友会景況調査(DOR)概要(2021年4~6月期)】景気改善続くもまだら模様 来期の見通しには慎重

〈調査要項〉

調査時点 2021年6月1~15日
調査対象 2,261社 回答企業 967社(回答率42.8%)(建設177社、製造業285社、流通・商業281社、サービス業215社、その他9社)
平均従業員数 (1)38.3人(役員含む・正規従業員)(2)27.9人(臨時・パート・アルバイト)
※業況判断DI(デフュージョン・インデックス)は、好転企業が悪化企業を上回っている割合(%)をさす。DIが100に近いほど、好転企業の割合が高いことを意味し、DIが-100に近いほど、悪化企業の割合が高いことを意味している。
 好転・悪化が同数の場合は、DIは0となる。ほかの指標のDIも同じ考えで作成されている。各水準DI以外、本文中特に断りがないものは前年同期比。

国内景況は製造業を中心に改善、ただし先行きは慎重な見方

6月8日に内閣府が発表した2021年1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は年率換算で3.9%増でした。しかし、2020年度の成長率はマイナス4.6%で、リーマン・ショックの影響を受けた2008年度以来のマイナスとなっています。

日銀の6月短観(全国企業短期経済観測調査)では、大企業製造業の業況判断指数(DI)は前回調査から9ポイント改善のプラス14となりました。中小企業製造業は6ポイント改善で△7になりましたが、依然としてマイナス圏にあります。

中国やアメリカの景気回復が加速した一方、日本や欧州の遅れが鮮明となり、取り残されるリスクの可能性などから先行きは慎重な見方をしています(図1)。

DORも今期は大きく好転するも、業況水準では悪化超過

DORでも全体的に改善傾向を示しました。ただし、多くの指標の比較対象となる前年同期(2020年4~6月期)は第1回目の緊急事態宣言が全国に発令されていた時期であることに注意が必要です。

業況判断DI(「好転」-「悪化」割合)は△23→11と大きく好転しました。足元の業況を示す業況水準DI(「良い」-「悪い」割合)は△19→△5と改善しているものの水面下にあります。

業況判断DIを業種別でみると、建設業は△14→△7、製造業は△30→21、流通・商業は△24→7、サービス業は△23→18と建設業を除く3業種でプラス水準になりました(図2)。また、すべての地域経済圏、企業規模で改善しました。ただし、次期(2021年7~9月期)は、業種や地域、企業規模によらず概(おおむ)ね悪化見通しとなっています。

仕入単価の急上昇で収益環境悪化の懸念も

売上高DI、経常利益DI(両指標ともに「増加」-「悪化」割合、△27→12、△22→11)は大きく上昇、採算水準DI(「黒字」-「赤字」割合)も13→26と黒字割合が高まりました。

とはいえ、その勢いは次期まで続きません。その背景の1つに仕入単価の急上昇があります。仕入単価DI、売上・客単価DI(両指標ともに「上昇」-「下降」割合、17→35、1→9)はともに上昇していますが、売上・客単価の上昇スピードを大きく上回る仕入単価上昇となっていることから、採算が悪化したという企業の声も増えています(図3)。

生産性に関しては1人当たり売上高DI、1人当たり付加価値DI(両指標ともに「増加」-「減少」割合、△24→9、△24→8)はいずれも30ポイントを超える上昇となりました。

設備投資のポジティブな動き続く、金融面は今後の動向に注意

設備の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は4期連続で不足感が強まりました。設備投資の実施目的では「能力増強」の割合が増加するなど、ポジティブな動きが出てきました。

資金繰りDI(「余裕」-「窮屈」割合)はわずかに余裕感は強まりましたが、対個人サービス業の余裕感は弱まっています。今期は短期の借入金利が上昇し、全体として借入難度DI(「困難」-「容易」割合)は容易超過にあるものの容易さが失われつつあります。今後の金融環境に注意を払い、自社の財務状況を把握しておくことが必要です。

正規従業員数、臨時・パート・アルバイト数の各指標は回復基調

雇用面では、正規従業員数DI、臨時・パート・アルバイトDI(両指標ともに「増加」-「減少」割合、△9→7、△12→1)は回復基調にあり、所定外労働時間DIも4期連続で増加しています(図4)。人手の過不足感DI(「過剰」-「不足」割合)は全業種で不足超過が続いています。

環境変化への対応力強化で現状打破を

今期、経営上の問題点では「仕入単価の上昇」が急上昇(13%→27%)しました。特に建設業と製造業でその傾向が顕著で、この2業種では「仕入先からの値上げ要請」の割合も強まりました。一方、「民間需要の停滞」は6期連続で最多ですが、2020年7~9月期をピークに徐々に減少しています(図5)。

経営上の力点は今期も「新規受注(顧客)の確保」(61%)、「付加価値の増大」(48%)が2大重点項目として指摘されています。

仕入単価の急上昇や米中貿易摩擦といった世界情勢の緊迫など先行きの不透明さは増し、日本においてもコロナ禍の収束が見えず苦境に立たされている業種もあります。そのような状況下で製造業を中心に生産活動が再開し、今期は景況持ち直しの動きも見られました。それを支えるのは、ピンチをチャンスに転換し前向きな姿勢で臨む企業の存在です。記述回答でも積極的な取り組みについての声も増え、現状打破につながる歩みとして期待が高まります。環境変化への対応力強化で地域経済を支える企業の輪を広げていきましょう。

<会員企業のポストコロナ対策の取り組み ~記述回答から>

・(1)取扱品目を増やしました。(2)在庫量を増やし不確実な仕入品目に対応しました。(3)社内の改装をして働きやすい環境をつくりました。(4)倉庫を購入し、在庫増に対応しました。(5)人員を増やし、高齢社員の退職に備えました。(6)環境対策でEV車を導入しました(青森、流通・商業)
・DXを意識し、顧客満足度を向上せしめるためにデリバリー情報をリアルタイムで伝達するためのシステムの改善を試みました。これらのシステムのレベルを段階的に向上させより一層の当社の強みを盤石なものとしていこうと考えています(大阪、流通・商業)

「中小企業家しんぶん」 2021年 8月 5日号より