求人票確認作業から垣間見た法令違反の落とし穴 (株)エム・ソフト 顧問・社会保険労務士 西 秀樹(東京)

【会社を成長させる人材採用!知っておきたい役立つポイント】

 コロナ禍での採用・就職活動では企業も学生も手探りが続いています。そんな中で大きく変化している採用活動の基本を今1度確認し、人を生かす経営の実践につなげていくことが大切です。連載「会社を成長させる人材採用! 知っておきたい役立つポイント」の第3回目は、「求人票確認作業から垣間見た法令違反の落とし穴」です。

 第2回連載の中で、求人情報の明示等に係る法的責任は募集を行う求人企業・事業主であり、求人票には従事する業務内容や賃金、勤務時間、その他労働条件を明示しなければならない、と記載しました。

 新卒採用において、学生は、企業が作成した求人票を見て、応募の意思を固めていきます。

 求人情報提供事業者(Jobway)は2018年に「適合メディア宣言」をし、Jobwayに掲載する求人票が法令に反する募集情報に当たらないのか確認作業を進めています。

 確認作業を行う中で、企業が知らずに法令違反に陥りやすい箇所を5つ紹介したいと思います。

(1)月平均所定労働時間

 時給単価を求めるための式で、(365日―休日)×所定労働時間÷12カ月を使用しますが、月所定労働日数や月平均所定労働時間数を固定化し、給与規程に記載しているケースが見られました。

(2)割増賃金の計算方法

 家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当・住宅手当・臨時に支払われた賃金・1カ月を超える期間ごとに支払われた賃金以外は割増賃金の計算から除外できません。

(3)最低賃金の計算方法

 精勤手当・通勤手当・家族手当・時間外手当・休日勤務手当・深夜勤務手当・臨時に支払われた賃金・1カ月を超える期間ごとに支払われた賃金を除いて計算した時給単価になり、毎年10月1日をめどに改正されますので、求人票作成時には法違反でなくても10月1日で最低賃金を下回るケースが出てきます。

(4)固定残業手当

 名称の如何(いかん)を問わず一定時間分の時間外労働等に対して定額で支払われる割増賃金であり、その導入には労使の十分な協議が必要な場合もあります。経営者は、自社の固定残業手当が「手当式」「組込式」のいずれを採用しているのか、その採用の背景を十分に理解しておく必要があり、かつ(1)、(2)および勤怠管理をしっかりと行う必要があります。

(5)労働条件通知書の明示義務

 労働基準法第15条で定められた事業主の義務であり、2019年4月からFAX・メール・SNSなどでもできるようになりました。明示時期を注意しましょう。

「中小企業家しんぶん」 2021年 8月 15日号より