2020年度の各同友会の委員会活動について 各同友会活動実態調査から(3)

全国の同友会の活動を数値レベルで把握するため、2006年度から各同友会事務局の協力のもと活動実態調査を行っています。2020年度は新型コロナウイルスによる相次ぐ自粛要請により、会員企業の経営環境に大きな影響があり、同友会活動においてもさまざまな活動方法の切り替えを余儀なくされました。

第3弾となる今回は、各同友会の委員会活動について振り返ります。

【調査実施期間】2021年4月1日~4月22日
【調査対象】各同友会(事務局へ回答依頼)
【調査方法】e.doyuNEWアンケートより入力
【回答数】47同友会

企業づくりの取り組み~経営指針は企業経営の生命線

 2020年度は新型コロナ感染拡大による緊急事態宣言などの自粛要請などによって国内経済は厳しさを増し、中小企業も例外なく大きな打撃を受け、業種によってはより深刻な影響を受けています。また、生活や仕事の面における大変化に直面し、「経営者である以上、いかに環境がきびしくとも、時代の変化に対応して、経営を維持し発展させる責任があります」とした「中小企業における労使関係の見解」(労使見解、1975年中同協発表)の本質的意義に立ち返り、困難を乗り越えるための欠かすことのできない「よりどころ」として再確認する契機となりました。

 地域になくてはならない存在である中小企業、そのことを自覚した同友会の企業づくりの取り組みは、「中小企業を守ろう」とする自治体や金融機関とも呼応し、中小企業振興基本条例や連携協定などを背景に、これまでのどの経済的危機にも増して幅広い連携を生み出しています。人と人との絆を紡いでいく地域における中小企業経営者の役割も大きくなってきており、「人を生かす経営」実践の真価が問われています。

経営指針成文化運動~経営理念の実践が大変化を好機に変える力に

 経営指針成文化に向けた取り組みは46同友会で行われましたが、経営指針成文化セミナーの実施は6同友会で休止、1同友会で延期、1同友会でセミナーの代わりに見直し講座を開催するなど、新型コロナの影響を大きく受けました。のべ回数も今年度は83回(2019年度は113回、2018年度は95回)、課程を修了した会員数も757名(昨年度は1354名、一昨年は1426名)に減少しました。

 開催形式は少なくとも20の同友会でオンライン形式を取り入れていることが分かりました。開催方法は多岐にわたりますが、これまで築いてきた学びと実践の歩みを止めてはならないといった危機感を持って対応してきたことは全国的に共通しています。

 セミナー開催に関わった会員数は2090名にのぼり、多くの同友会で経営指針成文化の歩みが継続されてきました。なお、経営指針成文化セミナーにこだわらずに「労使見解」の学習を行った同友会は46同友会にも及び、昨年から1同友会増えました。

 中同協や各同友会で実施された調査結果でも、経営指針を作成し、経営理念に基づいて計画的な経営を実践している企業ほど変化への柔軟な対応力が発揮され、負の影響を回避し、次なる一歩につなげる冷静な姿勢を堅持していたことが明らかになっています。同友会がめざす企業づくりの真価がコロナ禍によって明確になったとも言え、より一層経営指針成文化と実践の推進を図る意義が高まりました。

 2009年に発刊された『企業変革支援プログラムステップ1』はこれまでに3万部、2012年発刊の『企業変革支援プログラムステップ2』は1万部ほど普及されました。また、同ステップ1のe.doyuへの登録数は2438件、45同友会の会員が取り組んでいます。

共同求人活動~大卒求人倍率低水準で推移、就活状況の変化も

 2021年3月卒業の大卒求人倍率は1・53倍、2022年卒では1・50倍と予測され、2019年の水準(1・83倍)には戻らず、厳しい状況が続いています(出典:リクルートワークス研究所、2020年4月現在)。採用・就職活動においても、企業、学生ともに手探りが続く中、地域に若者を残し育てる運動として共同求人活動が各同友会で行われました。

 Jobway参加企業は786社(2019年度:1039社、前年比75・6%)、Jobway登録学生数は5579名(2019年:4812名、前年比115・9%)で、参加企業が減少し、登録学生数が増加しました。一方、各同友会が開催した合同企業説明会の参加企業数はのべ1178社(2019年度:2611社、前年比45・1%)、合同企業説明会への来場学生数はのべ405名(2019年度:4345名、前年比92・2%)で参加企業、来場学生ともに減少しました。

 情勢や生活様式の変化に伴い、学生の就活状況にも変化が出てきています。合同企業説明会の開催(リアル、オンライン)、企業紹介誌・企業紹介動画の制作、大学や高校などの授業への講師派遣・協力など、地域の学校や関係機関と連携しながら進められました。

インターンシップ~学校との連携で地域の未来づくりにつなぐ

 今年度は26同友会でインターンシップを実施し(対象は中高大学生および障害者)、のべ193社で少なくとも361名の学生を受け入れました。さらに詳細を見ていくと、2020年12月に実施した共同求人アンケートでは、キャリア教育やインターンシップなど学生に「働くこと」の意義や中小企業の役割・魅力を伝える活動として、学校との連携を行っているのは大学で19同友会177校、高校で11同友会172校でした。なお、受け入れ校数については確認できる数で、実際はこれ以上と見られます。新型コロナにより中止となったケースや募集をしても学生からの申し込みがなかったケース、オンライン型インターンシップの実施や経営者を講師とする勉強会の実施で対応したなど、生活様式の変化に伴い、各地、各学校、各企業で開催形式を模索しています。

 また、昨年度は中小企業の魅力を発信する場として「学生と先生のための中小企業サミット」を開催し、全国から55社の企業が参加しました。共同求人委員会では、引き続き新卒採用という切り口から企業体質の強化と地域との連携強化を図ることで地域づくりを担い、地域で若者を育てる活動を進めていきます。

合同入社式・新入社員研修会、幹部社員研修、同友会大学~新型コロナの影響でいずれも減少

 合同入社式を行った同友会は19同友会(2019年度:41同友会)、新入社員380社711名(2019年度:1357社、2580名)の参加者数となりました。経営者は466名(2019年度:1357名)でした。実施した19同友会のうち、リアル開催が12同友会、オンライン開催が4同友会、2同友会でハイブリッド開催、1同友会で会報紙の号外で代替など、工夫を凝らして開催していました。

 新入社員研修会は30同友会(2019年度:41)が実施し、新入社員は626社1295名(2019年度:1186社2620名)で経営者は499名(2019年度:888名)が参加しました。新入社員研修を中止した同友会のうち、6同友会でフォローアップ研修を開催していることが分かりました。参加者数の減少傾向にある中でのコロナ禍による打撃が数値に反映されてしまいました。従来のような開催形式が難しくなり、課題も増えていますが、本質的な意義を見つめ直し新しい形を創造する契機としていきましょう。

 幹部社員研修会は24同友会(2019年度:33)で実施、経営者を対象としたシリーズの学習の場である「経営者大学」は12同友会(2019年度:15)で取り組まれました。企画を検討中と回答した同友会もそれぞれ4、6同友会あり、学び・交流し、実践を止めない取り組みへの挑戦は続きます。

調査で現状を数値化、俯瞰することで将来を見通す

 現在、30同友会で景況調査を実施しています。頻度は年1回が5同友会、半年に1回が11同友会、3カ月に1回が12同友会、4カ月に1回が2同友会となっています。また、経営環境の大変化の実情をつかもうと、40の同友会で影響調査やヒアリングを実施しました。

 調査結果から経営課題を見いだし企業経営を客観視する目安として、また、会員企業の実情を示すデータベースとして活用することで、例会内容の検討や、政策提言などの根拠として集計、分析を深めていくことが重要です。

「中小企業家しんぶん」 2021年 9月 5日号より