回答企業の47%に「影響あり」~商品調達への支障や物流コスト上昇に多くの指摘 高千穂大学経営学部 准教授 中同協・企業環境研究センター委員 藤木 寛人氏

【2021年4~6月期の同友会景況調査(DOR)オプション調査より】新型コロナによる物流への影響

2021年4~6月期の同友会景況調査(DOR)オプション調査では「新型コロナウイルス感染症の流行に伴う物流への影響について」に関する調査を行いました(回答数967件)。その結果について、中同協・企業環境研究センター委員で高千穂大学経営学部准教授の藤木寛人氏に分析・執筆していただきました。

新型コロナウイルス感染症の流行等の影響によって、海上輸送における空きコンテナやスペースの不足等が発生し、海上運賃や航空運賃の高騰や輸送リードタイムの長期化が問題となりました。中同協景況調査(DOR)2021年4~6月期では、この問題が物流に与えた影響についてオプション調査を実施しました。

物流への「影響あり」47%、「影響なし」39%

図1は新型コロナウイルス感染症の流行による物流への影響の有無について調査したものです。「影響なし」が39・6%となり、「影響あり」は調達面で11・0%、販売面で21・1%、調達・販売面で15・0%という結果になりました。「影響あり」は全体の47・2%に及んでいます。

業種別にみると、調達面では建設業(20・9%)での影響が目立っており、特に総合工事業(民需中心)と職別工事業で影響が大きかったようです。販売面では、製造業(24・6%)と流通・商業(25・4%)での影響が目立っています。特に、製造業では食品製造業で、流通・商業では卸売業で影響が大きかったようです。

従業員規模別では、「20人以上50人未満」で「影響あり」の割合が51・6%と最も高く、次いで「50人以上100人未満」(50・0%)の順でした。従業員規模が大きいほど物流に影響が生じている傾向が読み取れそうです。

地域別では、「関東」、「北陸・中部」、「近畿」において「影響あり」と回答した割合が他地域に比べて高く、3大都市圏を中心に影響が生じているようです。

業況判断(前年同期比)および業況水準との関係では、業況が悪化した回答者ほど、物流への影響が生じています。新型コロナウイルス感染症の流行による物流への影響が業況の悪化につながっていると推察されます。

主な影響は「商品調達に支障」「物流コスト上昇」共に約31%

図2は、新型コロナウイルス感染症の流行によって物流にどのような影響が生じたかについて調査したものです。割合が高い順に、「必要な商品の調達に支障が出た」(30・9%)、「物流コストが上昇した」(30・6%)、「物流にかかる時間が長くなった」(19・4%)、「販売先が変化した」(18・7%)、「海外との物流に支障が出た」(14・6%)という結果でした。

中同協景況調査では、上記に関連して、「コロナの影響で海外から原材料の調達が困難になり、海外の原材料を使用しない製品づくりを行う」(北海道、コンクリートブロック製造販売)や、「在庫量を増やし不確実な仕入品目に対応しました」(青森県、燃料販売業)などの調達に関連する実例が報告されています。そのほか、「ウッドショックと鉄筋の値上がり、先行、不安が拭えない」(埼玉県、セメント・生コン・建材卸売り)など、コスト上昇に関する実例が多方面から報告されています。

業種別にみると、建設業は調達面での影響が大きかったことから、「必要な商品の調達に支障が出た」が51・2%と最も大きな割合を占めています。「物流コストが上昇した」(36・6%)、「物流にかかる時間が長くなった」(29・3%)といった影響も他産業に比べて大きかったようです。販売面での影響が大きかった製造業と流通・商業をみると、製造業では、「物流コストが上昇した」(35・9%)、「必要な商品の調達に支障が出た」(22・5%)、「海外との物流に支障が出た」(21・1%)といった影響が生じたようです。流通・商業では、「必要な商品の調達に支障が出た」(32・9%)、「物流コストが上昇した」(28・8%)、「販売先が変化した」(20・5%)といった影響が高い割合を示しています。サービス業では「販売先が変化した」が30・9%と最も大きな割合となっており、「その他」(27・9%)が多いのが特徴です。

従業員規模別にみると、最も影響が大きかった「20人以上50人未満」で「物流コストが上昇した」(41・7%)という影響が目立ちます。また、「20人以上50人未満」以上の階層では「海外との物流に支障が出た」という影響が大きかったようです。

地域別では、「関東」、「北陸・中部」、「近畿」といった3大都市圏でいずれも「物流コストが上昇した」という影響が大きな割合を占めています。また、「北陸・中部」では「海外との物流に支障が出た」(26・7%)という影響がほかの地域に比べて目立っています。

物流に関する課題は「物流コスト低下(削減)」

図3は、物流に関する課題について調査したものです。「特に課題はない」が34・0%を占め、課題として挙げられたものとしては「物流コストの低下(削減)」(22・3%)、「物流業務でのデジタル化・情報化」(9・5%)、「物流リードタイムの短縮化」(7・8%)が比較的高い割合を示しています。

業種別にみても、「物流コストの低下(削減)」がサービス業以外の業種で高い割合を示しています。多くの会員企業が物流コストの上昇に悩まされていることが分かります。そのほか、製造業で「物流リードタイムの短縮化」が12・0%、流通・商業で「物流業務でのデジタル化・情報化」が14・9%とやや高い割合を示しています。

従業員規模別では規模が大きくなるにしたがって、物流への課題を挙げる傾向があるようです。「20人以上50人未満」では「物流業者の新規開拓」(7・5%)、「50人以上100人未満」では「物流リードタイムの短縮化」(13・6%)、「物流業務でのデジタル化・情報化」(13・6%)の割合が他の階層に比べて高くなっています。

製造業でサプライチェーンに変化あり

また、新型コロナウイルス感染症の流行によってサプライチェーンにどのような変化が生じたかについて調査しました。「特に変化はない」が60・3%、「自社とは関係ない」が22・1%を占めており、サプライチェーンに変更があった会員企業は少数にとどまっていることが分かります。

しかし、業種別にみると、製造業における国内外でのサプライチェーンの変化を読み取ることができます。「自社の調達先を変更した」のうち、海外から国内への変更が4・2%、外注から内製への変更が3・5%、一方で「取引先や顧客が調達先を変更した」では、海外から国内への変更が3・1%、外注から内製への変更が4・6%と他の業種よりも高い割合を示しています。また、従業員規模が大きいほど、3大都市圏ほど、サプライチェーンに変化が生じているという傾向がありました。

オプション調査では、新型コロナウイルス感染症の流行が物流に多大な影響を及ぼしていることが明らかになりました。感染症流行の収束はいまだ先行きを見通せるような状況にはなく、今後も物流の動向について注視していく必要がありそうです。

「中小企業家しんぶん」 2021年 9月 15日号より