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ミッション遂行でステージを変える~レポート『ウィズコロナ以降の今後の経済産業政策の在り方について』を読む

最大規模の財政支出実行

 最近、おもしろい論文を見つけました。6月に経済産業省が産業政策の新たな方向性を打ち出したレポートです。新型コロナ・パンデミックの余波がこれからも続くという見通しの下、経済政策を転換する必要性が強調されています。ズバリ言えば、世界中で「政府の役割」が拡大し、歴代最大規模の財政支出を実行しているということです。例えば、米国では、先端技術分野への投資や老朽化したインフラの更新などに巨額の財政支出を行うとしています。8月にはインフラ投資法案が、与野党調整の結果、今後5年間で1兆ドル規模まで支出することが合意されました。米国が長年の課題に一歩踏み出した意味は大きいものがあります。

 国際世論の潮流変化は今や明らか。将来の経済発展に政府が積極的に関与したいということです。社会的課題の解決に政府の財政支出を有効に活用するという姿勢が明確にされています。

ミッション志向の産業政策

 また、従来型の産業政策が、成長や雇用創出に重点を置いたものだったとすれば、今回のレポートでは、「健康」や「人権」、「安全保障」や「レジリエンス」、「温暖化対策」といった新たな政策課題への対応が強調されている点に特徴があります。すなわち、経済的豊かさの確保だけでない、多様な「価値」の実現に焦点を当てたものになっています。これは、「ミッション志向」の産業政策と言えます。次世代の産業政策は広範囲な公共目的を達成するものでなければなりません。

 しかし、どの分野への政府支援を強化することが望ましいのかといった具体論になると、議論の方向性はたちまち分かれることになります。『ウィズコロナ』レポートでは、「豊かな生活、環境の保全、安全の確保、雇用の安定、格差の改善、公平な教育、持続可能な地域、健康な生活(Well‐being)」などの複数のミッションが候補に挙げられており、なかでも「環境」、「安全保障」、「分配の改善(格差是正)」の3つが主たる目標として設定されています。

ゲームのルールが変わる

 これからは「ゲームのルール」が変わります。国際的な政治経済秩序の脆弱化や、財政均衡主義の後退という国際世論の変化によって、各国が独自の政策方針を打ち出す余地が増えているからです。どのような政策も、国民的な合意に裏打ちされたものでなければ、力強いものになりません(柴山桂太・京都大学大学院人間・環境学研究科准教授「経産省が『産業政策の再評価』に舵を切った理由」東洋経済オンライン、2021年6月30日)。

 多数派である中小企業にとっても、ミッション志向の産業政策や分配の改善など登場する場面はたくさんありそうです。新時代の産業政策について議論を深めていきましょう。

(U)

「中小企業家しんぶん」 2021年 9月 15日号より

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