【特集】同友エコ2020受賞企業の実践【同友エコ環境経営委員長賞】エネルギーの地消地産をめざす (株)アズマ 代表取締役 中島 一嘉氏(福岡)

建築板金、屋根工事、とい工事などを手掛ける(株)アズマの中島一嘉氏は1999年から太陽光発電事業に参入しました。環境問題の深刻化により、自然災害が多発しSDGsの目標達成が取り上げられる中、どうすれば再生可能エネルギーを地域に普及することができるかを考えました。

(株)アズマは、8女地域の中小企業73社の出資で2017年に設立した、地域新電力会社「やめエネルギー株式会社」と連携し、2020年6月から、「エネルギーの地消地産」を目的として、太陽光発電システムと蓄電池を無償で提供する『LED’S(Local Energy Direct Supply)』をスタートしました。

LED’Sは、八女地域の事業所や住宅の屋根上を中心に無償で太陽光パネルと蓄電池を設置し、電力供給や利用、施設の施工・運営・管理など、すべてを八女地域の中で行い循環させるプロジェクトです。

LED’Sには「災害時の電源確保」と「電気料金の低減」の2つの利点があります。

1つ目の「災害時の電源確保」は、システム契約時の約束事として、「災害時には近隣住民に蓄電池を解放し、皆さんに使用していただくこと」を前提条件に導入を進め、広がれば広がるほど災害時に使用できる電源スポットが増える仕組みで、町全体が災害時に電気に困らないようになります。

2つ目の「電気料金の低減」は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)により、原則10年の契約期間中は太陽光発電による自家発電と再生可能エネルギー賦課金によって通常の電気料金より低コストで電気を使用することができます。また10年後には無償で太陽光発電システムを譲り渡し、10年後も余剰電力は地域の電源として地域内に循環させていきます。こうしてFIT終了後も継続して稼働することで、地域で作った原価0円の電気を地域内に循環させることができ、地域外にお金が流れることを防ぎます。

中島氏はLED’Sの取り組みを通して太陽光パネルを設置し、2030年までに6万人以上が住む八女市すべての電力供給を再生可能エネルギーで供給できるようにすることをめざしています。現時点では2016年時点の総消費電力である2億7000万キロワットアワーのうち5%ほどを発電しています。

中島氏がここまで環境経営へ尽力するのには「孫たちが暮らしていける地域を残していきたい」「環境だけではなく地域の問題も解決していきたい」「強い田舎をつくりたい」という思いがあるからです。昨今、日本各地で急激な人口減少が進行しています。事実、8女市を始めとする福岡県の筑後地域でも人口減少が進み、その原因の1つとして都市部への若者の流失が挙げられています。中島氏は事業を通じて地域に若者を残す取り組みを進めたいと考えています。事業によって生まれた利益を使い、どうやって若者がワクワクできるような地域をつくっていくか、また自分たちの活動をどう日本各地に広げていくか、LED’Sは1つの通過点であり、中島氏のこれからの取り組みが地域を変える大きな起爆剤になることは間違いありません。

「中小企業家しんぶん」 2021年 10月 5日号より