【2021年度共同求人活動から】共同求人活動は社会教育運動~地域に若者を残し、育てる

 2021年卒の採用は、採用広報活動がスタートする2020年3月から新型コロナウイルスの影響が出始め、採用活動の一時中断やオンラインへの対応が迫られました。2022年卒の採用は、引き続き新型コロナウイルスの影響があったものの、オンライン環境の整備も進み、大きな混乱もなく採用活動を行っている企業が多く見られました。

求人・就職活動の動向

 リクルートワークス研究所の大卒求人倍率調査では、2022年3月卒業予定の大卒求人倍率は1.50倍と昨年より0.03ポイント低下、昨年と大きな変化はなく、2020年3月卒の1.83倍から3年連続の低下となりました。バブル崩壊後の経済停滞期やリーマンショック、東日本大震災などの大きな社会不安時には、求人倍率が大幅に低下する傾向がありますが、コロナ禍での求人倍率の低下は、現時点では歯止めがかかっています。

 大卒求人倍率を規模別に見てみると、従業員数300人未満の企業は3.40倍から5.28倍と1.88ポイント、300人~999人の企業も0.12ポイント上昇した一方で1,000~4,999人の企業は1.14倍から0.89倍と0.25ポイント低下、5,000人以上の企業も0.19ポイント低下しています。企業側から見ると従業員規模1,000~4,999人、5,000人以上の企業で採用予定数は増加。300人未満と300~999人の企業では採用意欲の減少が見られ、コロナ禍の影響が長引いていることがうかがえます。そこにも関連して、昨年は、学生の就職希望先が大企業から中小企業にシフトしている傾向が見られましたが、今年は大企業を希望する学生が増加しました。

 Jobway参加企業は588社と前年より150社減少しました。一昨年の940社と比較するとこの2年で約4割減少したことになります。一方、登録学生数は5714名で前年比163.6%と増加しましたがコロナ前の水準には戻っていません。来年3月には、Jobway2023がリニューアルします。学生に全国の中小企業の魅力を伝えるツールとしての活用が期待されます。

教育機関との連携が進む

 各同友会では、昨年は新型コロナウイルスの影響で合説や学校訪問、インターンシップなどが実施できない状況がありましたが、今年度はオンラインも併用しつつ、これまで同友会が大事にしてきた対面での活動も多く行われました。また、7月に実施した共同求人活動調査では、活動の特徴として「学校等からの協力要請の増加」が多く挙げられました。大学だけではなく、高校や中学校などでも講師派遣や教員との懇談などが行われており、学生や生徒に「働くこと」の意義や中小企業の役割・魅力を伝える活動や地域で連携して若者を育てる動きが見られました。

採用と教育を一体として

 中同協では、11月18~19日に2021共同求人・社員教育活動全国交流会を宮城で開催しました。1年9カ月ぶりとなるリアル開催には、37同友会・中同協から276名が参加。「地域ぐるみで人が育つ!採用と共育で未来をつくる中小企業~復興から次のステージへ~」をメインテーマに三位一体の企業づくり、共同求人活動の到達点、地域の教育機関・行政との連携など4つの分科会と記念講演に学びました。川中英章・中同協共同求人委員長は「共同求人し、採用した社員を育てる。育てるには経営指針が必要であり、それがなければどんな人になってもらいたいのか、誰がお客さんなのか、どんな感謝をもらうのか、不明確になってしまいます。深い経営指針をつくることができれば、必ずよい会社、よい経営者、よい経営環境をつくれる会社になります。そうした会社が増えていくことが、会員増強にもつながり、地域の教育活動にもつながる、それが社会教育運動なのだと思います」と2日間のまとめを行いました。

中小企業の魅力を発信

 中同協共同求人委員会が主体となり、東京同友会の設営協力のもと「第2回学生と先生のための中小企業サミット」を12月13日に開催しました。

 中小企業の正しい姿を伝え、若者がいきいきと働き、暮らすことのできる地域をつくること。採用活動にとどまらない中小企業の魅力を発信する場とすることなどをコンセプトにしています。参加した企業からは、「自ら発信する力をつけることが必要だと感じた」「学生が業界のことを知らない、このような活動を続けていきたい」「運動として、やり続けることが必要」などの感想が寄せられました。

 今後も開催方法を工夫しながら継続して開催し、中小企業の存在意義を広げていく機会とします。

共同求人活動の真価が問われる時代に

 共同求人活動は単なる人採りの活動ではありません。同友会で学び、自社にとって必要な人材を発見・育成し、結果として会社が成長することが目的です。また、地域や社会に向けて活動する共同求人委員会の役割はますます大きくなっています。若者が暮らし、育つことのできる地域をつくり、雇用を創出することが地域経済の発展につながります。共同求人は人を育て、企業を育て、地域をつくる運動です。今こそ参加企業の輪を広げ、地域にあてにされる企業を増やしていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2021年 12月 25日号より