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【2022年1~3月期の同友会景況調査(DOR)オプション調査より】DOR回答企業の「中小企業の調達難や価格上昇」について 慶應義塾大学経済学部教授 植田 浩史氏(中同協企業環境研究センター座長)

9割以上に調達難・調達価格上昇の影響「深刻」「大きな」は半数~情勢変化を注視しながら価格転嫁、コスト切り下げなどの対策を

 2022年1~3月期の同友会景況調査(DOR)オプション調査では「中小企業の調達難や価格上昇」に関する調査を行いました(回答数871件)。その結果について、中同協・企業環境研究センター座長で慶應義塾大学経済学部教授の植田浩史氏に分析・執筆していただきました。

新型コロナウイルス感染症は世界中で多くの物資の生産、供給、輸送を混乱させ、半導体、原油、木材などの価格上昇を招いてきました。

国内では、企業物価指数が2021年以降急上昇し、最近では消費者物価の上昇も問題になっています。世界的な価格上昇は、ウクライナ侵攻によって、今後さらに強まることが懸念されています。

2022年1~3月期のDORでは、仕入単価DI(「上昇」-「下降」割合)は68と14年ぶりの高い水準になり、経営上の問題点では「仕入単価の上昇」55%は指摘割合が1位になっています。「仕入単価の上昇」55%は、1990年調査開始以来最高の数字です。

ここでは、同時に実施したオプション調査「中小企業の調達難や価格上昇について」から、中小企業の抱えている問題について見ていきます。

調達難、調達価格上昇の影響は多方面に

最初に調達難や調達価格上昇に関してどのような問題に直面しているのか、確認します(図1)。第1に、何らかの影響があると回答した会員企業は全体の92%であり、中小企業の多くが影響を受けていることがわかります。

第2に、回答上位項目については、「資材、部品などの価格上昇」57%、「ガソリン価格の上昇」48%、「資材、価格などの調達難」32%、「販売品の仕入れ価格上昇」31%と多方面に表れています。

建設業、製造業で深刻

第3に、業種によって価格上昇、調達難の影響の出方に違いが見られます。「資材、部品価格などの上昇」は建設業、製造業ではどちらも78%と他業種より高く、深刻さがうかがわれます。また、「資材、部品などの調達難」も建設業59%、製造業36%が全体より高い数字を示しています。

20業種別に見ると、価格上昇は総合工事業(民間中心)85%、機械器具製造業84%、金属製品製造業83%、化学・石油製品製造業80%、繊維・木材・同製品製造業77%、設備工事業74%、職別工事業74%が7割を超えています。

また、調達難では設備工事業78%、鉄鋼・非鉄金属製造業67%、総合工事業(民間中心)57%、機械器具製造業55%が5割を超えています。

建設業ではほかにも「ガソリン価格の上昇」58%、「外注価格の上昇」40%、「受注した仕事の納期遅れ」26%が高く、納期にまで影響が出ています。

製造業では「製造コストの上昇」42%、流通・商業では「販売品の仕入価格上昇」40%、「販売品の調達難」22%などが業種の特徴を反映しています。

一方、サービス業は「ガソリン価格の上昇」49%などの影響はあるものの、業種の性格から現段階では相対的に影響は小さく、「自社には影響ない」21%となっています。

9割以上の企業が影響を、「深刻」「大きな」は半数

次に、4業種での調達難や調達価格上昇の影響について見ましょう(図2)。

「現在影響はないが今後は影響がでる」を含め、影響がある企業は全体の9割以上、なかでも建設業、製造業はほとんどの企業で影響を受けています。

「深刻な影響がある」は全体では10%ですが、製造業では14%と高くなっています。「大きな影響がある」と合わせると、全体で49%、製造業は60%、建設業は56%と6割前後となり、深刻化していることがわかります。

高止まりはしばらく続く?

調達難や調達価格上昇の見通しはどうでしょうか(図3)。

最も多いのが「数年続く」24%です。「高値が定着する」14%と合わせて4割近い会員企業が、しばらく高値が続くことを予想しています。

一方で「2022年後半」20%、「2023年」19%となっており、1~2年で高止まりは終わるのではと見ている企業も約4割となっており、見方が分かれています。

「わからない」17%も多く、なかなか今後の状況を見通せていないことがわかります。

価格転嫁が課題に

調達難や調達価格上昇への具体的対策を聞いたのが図4です。回答項目の中で最も多かったのが「販売価格を上げ価格転嫁を図る」64%です。図には示していませんが、製造業80%、建設業72%はさらに高く、価格転嫁を重視している企業が多いことがわかります。価格転嫁が重要であることは言うまでもないことですが、顧客や取引先との関係で困難な場合も少なくありません。厳しい環境下で多くの企業が価格転嫁を重視している点は重要です。ただし、現実に実施されているのか、どのような水準で実施されているのか、などについては注意深く見ていくことが必要です。

価格転嫁以外は回答が分散し、「調達コスト以外のコストを下げる」22%、「調達先をかえる」20%、「製品設計やビジネスのやり方を変える」12%、「調達品の在庫を増やす」10%、「対応できることはない」10%、「調達品の利用を節約する」9%などとなっています。なお、これらの回答は業種による差が小さく、業種を超えてほぼ共通に見られます。

具体的対策で特徴的なのは、従業者規模で違いが見られることです(図5)。特に5人未満では価格転嫁、コスト切り下げ、調達先変更の上位3項目で全体よりも回答比率が低く、逆に「対応できることはない」の比率は全体の倍となっています。価格転嫁は、10人以上20人未満、20人以上50人未満、50人以上100人未満で7割近くと高く、コスト切り下げは50人以上100人未満、100人以上で高くなっています。

価格転嫁、コスト切り下げ、ともに情勢変化を注視

以上のように、調達難や調達価格上昇は、業種によって現れ方は異なるものの、多くの業種で企業規模に関わらず影響を与えており、深刻化している業種も少なくありません。

注意したいのは、ここで示した数字は、2022年3月時点のものであり、ウクライナ侵攻の拡大などにより、事態はますます厳しくなっていることです。調達難や調達価格上昇は、3月時点で予想していた以上に続く可能性が強くなっています。

今、中小企業が重視することとして、第1に、可能な限りの価格転嫁を進めていくことです。すでに、多くの会員企業が価格転嫁を重視し、実行しています。今後もしばらくは調達難や調達価格上昇が続く可能性がある中で、価格転嫁をどのように実行していくのか、改めて戦略的に検討することが必要になります。

第2に、価格転嫁と同時に、調達難や調達価格上昇がしばらく持続する可能性がある以上、社内でのコスト切り下げなどの対応も必要です。

第3に、今後の情勢への注視です。物価動向は、企業活動や消費に影響を与えるとともに、アメリカのように金融政策にも影響を与えていきます。先行きが見えない時期だからこそ、しっかりと情勢をつかむことが必要になります。

「中小企業家しんぶん」 2022年 5月 25日号より

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