【人を生かす経営 4委員長インタビュー】第1回 経営労働委員会 中同協経営労働委員長 林 哲也氏(香川県ケアマネジメントセンター(株) 代表取締役)

社会は急激に変化を迎え、今までの採用活動や教育、人々の生き方や働き方などのあり方を変え、中小企業経営にも大きな影響を与えています。経営者は、時代の変化に合わせて対応していく、企業づくりへの問い直しが求められています。そこで、今号から4回にわたり人を生かす経営推進協議会関連委員長に「これからの企業づくりをどう考えるか」について話を聞きました。今回は経営労働委員長の林哲也氏です。

変化に合わせた企業づくりで意識すること

 創業して27年ですが、あらゆることが劇的に変化してきました。変化に対して「変えてはいけないもの」(「経営理念」「社員が育つ環境」など)と「変えなければならないもの」(商品・サービスや売り方など)を明確にすることが大切です。

 「変えてはいけないもの」である経営理念は「あなたの場所で、あなたらしく」であり、これに導かれて「居宅介護事業だけの独立系のケアマネ」のあり方を追求してきました。また困難事例をお互いの知恵で乗り越えるよい人間関係を育ててきました。

 変化に応じて「変えなければならない」ことは山積しています。2000年から施行された介護保険報酬は3年ごと、介護保険制度は5年ごとに改定されます。また、保険者である地方自治体ごとに「ローカルルール」があります。

 変化の影響を受けるのは利用者と御家族です。私たちの利用者は、全員が在宅で看取りをめざそうとする方たちです。身体の衰えなどで在宅介護の困難性は高まりますが、制度改正や報酬改定は、さらに影響します。

 毎月、ケアプランをつくるのですが、その数は困難を解決する努力の積み重ねでもあります。この仕事は、利用者の変化、家族の変化、国と地方自治体の制度改正など多種多様な変化を総合的に把握し、辛抱強く、対応することが求められます。

社会情勢にどう対応していくか

 近年の経営労働委員会は(1)「企業変革支援プログラム」の発刊、(2)「経営指針の成文化と実践の手引き」の発刊、(3)「働く環境づくりの手引き」の発刊などに取り組みました。

 一連の取り組みは、「企業づくり」を軸にしながら「地域づくり」や「同友会づくり」の運動に効果を発揮しました。

 「企業変革支援プログラム」は、2009年3月に「ステップ1」を発刊し、3年後に「ステップ2」を発刊しました。発刊後の社会的な各分野の課題に対応し、同友会運動の発展も反映するために、中同協の各委員会や同友会も参加してプロジェクトが編成され検討が行われました。その結果、「新・企業変革支援プログラム」として本年秋に改訂版が出される予定です。この改訂版を活用することで、今日的な経営課題を踏まえた「自己評価」を行い「変革課題」を明らかにできます。

 「経営指針の成文化と実践の手引き」が2016年12月に発刊して以後、全国的に毎年1500名前後の修了生、3000~4000名の運営委員が関わり、会員の1割近くが参加する運動となりました。

 労使見解の実践の一環として「経営指針の成文化と実践の手引き」を活用することで、同友会が大切にしてきた本音の話し合いができ、会員間の関係性が強化され、役員の育成や「同友会づくり」につながっています。今後の成文化と実践運動は、数倍の会員が参加する運動としたいと考えています。

 「働く環境づくりの手引き」は、「経営指針の成文化と実践の手引きの副読本」として、働き方改革が施行される直前の2019年3月に発刊しました。働く環境づくりが「経営指針」に位置づけてこそ、成果の伴う実践となることなどを示しました。

 その後、中同協経営労働委員会監修のもと日本法令より、2019年3月に、10人未満の事業所向けに「1人でも雇用したら作成しよう~就業規則のつくり方」、2021年7月に、10人以上の事業所向けに「中小輝業への道」を出版しました。

 以上、時代の変化の中で産みだした「宝」を確認しました。国内外の経営環境の変化は、「宝」を会内の隅々に徹底的に普及し徹底実践することを求めています。徹底実践する経営労働委員会に成長していきます。

「中小企業家しんぶん」 2022年 6月 15日号より