【連載】ポストコロナを見据えて~10回の研究から 第2回 新たな社会に求められる企業づくり~前編

 中同協新型コロナウイルス対策本部では、2020年9月から2021年8月にかけて10回のポスト・コロナ研究会を行いました。今回はポストコロナ研究まとめの第2回目です。

(1)危機を乗り越えるための8つの企業づくりの方向

 2020年7月、当本部方針として、「同友会の英知を集め、総力をあげて「コロナショック」を乗り切ろう」と、企業づくりについて、危機を乗り越えるため以下の8点を提起しました。7点目まではリーマンショック後の企業づくりに通じるものですが、本部および正副会長会議ではコロナ禍は長期にわたると考え、新たに8点目を追加。営業キャッシュフローの改善は、緊急融資の返済が始まる中で、喫緊の課題となっており、全社を挙げていかに対応するかが問われています。

(1)危機を乗り越える経営姿勢を明確に示しましょう
(2)財務対策・資金手当てに全力をあげましょう
(3)危機感を社内で共有し、経営方針や経営計画を見直しましょう
(4)知恵を集めて新たな仕事づくりに取り組みましょう
(5)採用と教育、万能型BCP策定のチャンスと捉えましょう
(6)「見える化」と情報発信に取り組みましょう
(7)勇気を出して相談し、会員間ネットワークを強化・活用しましょう
(8)なぜ利益を出すのかを社員とともに考え、雇用を守り、全社一丸となって黒字化へ(営業キャッシュフローの黒字化)

(2)ポスト・コロナの企業づくりの6つの視点

 ポスト・コロナについては、(1)理念と手段の切り分け、(2)業界動向と自社の立ち位置を把握する、(3)事業再構築、企業変革への機会と捉える、(4)金融問題への対応、(5)人材育成、地域課題への取り組み、(6)企業づくりの基本「労使見解」の学び直しと経営姿勢の確認、の6点について、企業づくりのポイントをまとめました。

〈(1)経営者姿勢と経営理念がますます重要に~理念と手段の切り分け〉

 激動期に企業の羅針盤が定まらないことは、企業の将来を見失うことにつながります。経営者が哲学を、企業は経営理念・ビジョンを持ち、発信し、関係者と共有すること。また実行にあたっては手段・方法と目的、戦術と戦略を混同しないことです。経営環境、雇用環境など、企業にとって地域にとっても一気に変化が進み、感染拡大と同様に大きな波、業界や地域によっては津波のような破壊的波が短期間に何度も押し寄せています。手段や方法は柔軟に変化・対応しながらも、常に原点に立ち返り、社内外に方向性を示して発信・共有することで、全社一丸さらには、企業間、外部機関との連携や取り組みを進めることができるようになります。

〈(2)業界動向と自社の立ち位置を把握する〉

 自社の業界は縮小しているのか拡大しているのか、またその中で自社がとるべき方向性は何か、数値に基づく把握と前進、撤退・縮小を見極めること。例えば、拡大する業界で自社の売上拡大傾向にあれば生産性の向上や新製品開発に着手し、売上縮小傾向にあれば経営診断する。一方、縮小する業界で自社の売上拡大傾向にあればニッチトップ戦略や新規事業に着手し、売上縮小傾向にあれば、撤退・縮小を検討するというものです。事業再構築の際の方向性を見極める上で、各省庁や自治体、信頼のおける研究機関が定期的に出している各種統計を活用することで、より確実な傾向をつかみ、手を打つことができます。

〈(3)事業再構築、企業変革のチャンス~革新(創新)のためのイノベーション〉

 変化が大きければ大きいほど新たな市場も生まれます。上流から下流へ、下流から上流へ、異分野、異業種など新たな市場開拓へ、ニッチ市場を見いだす10年に1度のチャンスを捉えるときです。新たな生活様式で3密回避型の産業構造が生まれつつあります。この変化は新市場進出に挑戦するチャンスです。

 AIやIoT、5Gなどデジタルインフラが整備され、非接触サービスが日常的に提供できるようになります。一方で、開発・設計や生産、受・発注、決済、さらに労働環境や間接部門など企業活動の各分野でデジタル化への対応が求められます。「コロナが終息しても元に戻らない」変化です。デジタル化は当然のことながら、変化に柔軟に対応できるDX、BX、CXを総合的に進めるチャンスです。そのことは人件費に対するコスト意識を変え、付加価値増大に向けて、働く環境を整備していくチャンスでもあります。変化が大きい時の企業としての「革新」は、新たに創り出す「創新」であり、企業家精神を存分に発揮し、事業を変革し、再構築する絶好の機会となります。

(後編に続く)

「ポスト・コロナ研究まとめ」全文はこちらから
https://www.doyu.jp/news/220513-161458.html

「中小企業家しんぶん」 2022年 7月 15日号より