【人を生かす経営・4委員長インタビュー】第3回 社員教育委員会 若者に選ばれ、活躍できる企業づくりを 中同協社員教育委員長 梶谷 俊介氏(岡山トヨタ自動車(株)代表取締役社長)

社会は急激に変化を迎え、今までの採用活動や教育、人々の生き方や働き方などのあり方を変え、中小企業経営にも大きな影響を与えています。経営者は、時代の変化に合わせて対応していく、企業づくりへの問い直しが求められています。そこで、人を生かす経営推進協議会関連委員長に「これからの企業づくりをどう考えるか」について話を聞きました。今回は社員教育委員長の梶谷俊介氏です。

 これまで「大きくすることがよい」という観点で社会・経済を拡大し続けてきましたが、「地球の限界」に近づいており行き詰まっています。そして、新型コロナウイルス感染拡大やウクライナ問題によって大量生産・大量消費と長距離輸送に限界があることがはっきりしました。地域の暮らしの観点からみると、生活に必要なものは身近な地域で作り消費する、つまり地域内循環を高めることの重要性が一層高まっており、その上で広域な循環の活発化も必要になっています。「大量に作って安く売る」という発想から「よいものを高く売る」という価値の高い社会にならないといけない、そういう時代になっていくと思います。

SDGsの本質は人権問題

 SDGsは環境問題と思われがちですが、本質は人権問題です。一人ひとりが自分らしく生きられ、将来世代にわたって人権を尊重する社会をつくることをめざしています。そのために必要な目標として17のゴールが設定されています。企業経営の面では、人権を尊重しつつ、持ち味を生かすことができる企業体になれるかどうかが問われる時代になってきています。そのためには地域との関わりが重要です。自分たちが持っている技術やサービスなどが地域の課題に対してどう貢献できるのかを考えると、地域社会における自社の存在価値や強みに気づくことができます。

ひとりの人間としてどうあるべきか

 社員教育委員会では、「ひとりの人間としてどうあるべきか」という同友会の根幹として築いてきた本質を理解するという観点で改めて先人たちの言葉をひも解き、本質は何かを議論し、社員教育・共育ちのあり方を再度考えたいと思います。同友会の先人たちは企業で言えば創業者です。創業者の理念をどう継承し、発展させていくか、創業期の人の思いを再確認し深めていくことが重要だと考えています。

 同友会は発足当初から「人間尊重の経営」を掲げており、現在のSDGsに通じる先見の明がありました。一人ひとりが自分の人生を全うできるように人を育てていこう、また共に育っていこうというまっとうな考えのもと、戦後の混乱期に経営のあり方を議論する中で、同じ人間として対等な立場での労使の信頼づくりを経営姿勢としてめざしてきました。そして、人権を尊重しながらよりよい企業づくり・社会づくりに取り組んできました。大きく時代が変化しているいま、これを再確認する必要があると思います。

若者は地域への関心が高い

 2016年に学習指導要領が改訂され、「社会に開かれた教育課程」の実現が理念として掲げられました。激しい社会変化において、子どもたちがそれを乗り越える力を育むため、社会と連携・協働し地域一体となって若者を育てていく方向に、学校教育そのものが変わろうとしています。

 学生たちは自分なりに地域の課題を見つけ、その課題に取り組み、そしてそれぞれの取り組みを横串で通して学んだ知識をどう生かすかという観点に変わってきています。そして、今の若者は地元地域や社会的課題に対する関心が高く、解決したいと思っています。社会課題解決型の起業家も増えています。

 そういった若者が育ちつつあることは、企業に対しても影響があります。つまり、古い企業体質では若者に選ばれないということです。価値観やものの見方を変えないといけません。自社がどのように社会に貢献しているかを語り、若者が力を発揮できるような環境を用意しないと見向きもされません。若者が入社してくれなくなると、企業は持続できなくなります。社員一人ひとりの熱い思いを引き出して具現化する環境を企業の中でつくっていくためには、地域との関わりが必要です。それが自社の企業価値を高めていくことにつながると思います。つまり、新学習指導要領で掲げられている理念や方針の実現のためには、教育において地域の経営者の関わりが必要不可欠であること。同時に企業も、そうした取り組みに関わることで将来の地域の担い手である若者に選ばれる企業に変革していくことが求められています。

会社概要

設立:1945年
従業員数:347名
事業内容:新車販売、各種中古車販売・買取、自動車整備・修理、保険代理店他
URL:https://okayamatoyota.com

「中小企業家しんぶん」 2022年 8月 15日号より