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【あっ!こんな会社あったんだ】経営指針 吉野林業を伝え、時代に合わせた関わりを大切に~吉田製材(株) 代表取締役 吉田 敦彦氏(奈良)

 企画「あっこんな会社あったんだ」では、企業経営に関わるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介しています。今回は「経営指針」をテーマに、吉田敦彦氏(吉田製材(株)代表取締役、奈良同友会会員)の実践を紹介します。

 創業101年目を迎える材木加工メーカーの吉田製材(株)。吉田氏は入社して18年目、代表に就任して1年。毎月多くの工場見学を受け入れています。

奈良の木材業界

 吉野林業は約400年の歴史があります。すべて植林した人工林で私有林のため、林道をつくる許可が取れず、伐採した樹木はヘリコプターで運びます。また、枝を切り落とす「枝打ち」の文化があり、枝打ちした木材には「節」がなく、木目の整った材ができます。もともと酒樽をつくるために生まれた文化で、その後は寺社仏閣や和室の柱を節のない木材でつくっていました。しかし、時代とともに和室の数は激減し、柱は壁の中に隠れて見えないため節のない良質な木材は必要とされなくなります。斜陽産業といわれる中でどうビジネスを続けるかが課題でした。

2度の廃業の危機を乗り越えて

 吉田氏は、大学卒業後2005年に父が社長を務めていた現在の会社に入社。当時は、注文数が激減しており、最盛期は1カ月数億円だった売上が60万円ほどまで落ち込んでいる状態で、廃業の危機にありました。

 入社前、大学3年生だった吉田氏は「どうにか会社を継続し売上を作りたい」とホームページを自力で作成し、当時としては珍しいネットショップをスタートさせました。すると徐々に口コミが広がっていき、やがて問屋や販売店などを通さず工務店から直接注文が来るようになり、新規受注が増えていきました。その過程を通して「『自分たちの売りたいもの』や『高級で質のよいもの』は必ずしも『お客さまが欲しいもの』ではない。その時代にお客さまが求めているものを提供することが会社が生き残るために必要なことだ」と気づきました。

 吉田氏が入社した15年間で会社は180度変化します。取引先は増加し、売上は20倍になりました。しかし、忙しくなるにつれ社内の雰囲気が悪くなり、社員の退職が相次ぎました。再び廃業の危機を迎えます。吉田氏は、社員をモノ扱いしていたことに気づき、社員がいるから仕事ができるのだと今後進むべき方向性を明確に示し、働く社員との信頼関係を築く必要があると感じ、創業90年目にして初めて経営指針書の作成に取り組みました。

 2015年に理念を成文化、同時期に中期経営計画も発表しました。しかし、社長1人で考えたSWOT分析では現場の社員には響かず、経営者の思う自社の強み・弱みと社員の考える強み・弱みは異なり、同じ目線にならなくてはいけませんでした。そこで計画づくりから社員を巻き込みブレインストーミングを行い、社員一人ひとりの意見を取り入れて2016年より経営指針書に反映させました。社員は「自分が言った責任があるから私たちも考えて動かなくてはいけない」と仕事に対する意識が変わりました。

吉田製材ならではの事業

 他社との差別化を考えたとき、売るべきはモノではなくサービスであり、そこに付加価値をつけようと考えました。そこで目を付けたのが、自動販売機です。飲み物はスーパーなどで買った方が安いにもかかわらず、欲しい時に欲しい分だけ届けるので自動販売機は値段が高くても売れます。他社と差をつけるために、欲しい時に欲しい分だけ、お客さまが望んでいる商品を届けることに価値があると考え、オーダーメイド、現場直送、短納期での事業を始めました。現在は、ほかにも不燃木材や傷つきにくい圧縮硬化床材「パワフルフローリング」なども取り扱っています。

 また、工場見学を受け入れていることで、多くの人に奈良の製材業界を知ってもらう取り組みを強化しています。自社にとっても、見学に来ているお客さまのために日々仕事をしているのだと改めて実感でき、社員のモチベーションアップにもつながり、いきいきと働けるようになっています。

 ホームページは5つのサイトを持っており、販売チャンネルの多角化にも取り組んでいます。デザイナーも常駐しており、ホームページや広報誌も自社で制作しています。これは、お客さまに伝えたいことを自分たちと同じ目線、同じ思いの人が作成することで、より自分たちの思いが伝わるとの考えからです。

 時代に合わせて関わり続けることを大切に、「木のまち」のさらなる発展をめざします。

会社概要

創業:1921年
設立:1949年
事業内容:木材加工業
従業員数:35名
所在地:奈良県桜井市吉備557
URL:http://www.yoshidaseizai.co.jp

「中小企業家しんぶん」 2022年 9月 5日号より

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