【変革と挑戦―各同友会の実践事例から】香川から全国へ!地域で若者を育て、地域に若者を残す~産学連携による共育型インターンシップの実践

 教育の原点とも言われる小説「24の瞳」を書いた作家の壺井栄が作品の舞台に選んだとされる香川県は、かつては教育県と呼ばれたこともありました。しかし、近年は大学進学者4929人(令和2年度)のうち、83%にあたる4102人が県外に進学します。大学卒業後、「地元に誇りを持って働けるよい企業がある」ことを知らずに、そのまま県外で就職することが大きな課題となっています。

 香川同友会では、中同協共同求人・社員教育合同委員会で山形同友会と山形大学の「産学連携低学年地域密着型インターンシップ」を学び、新しい形のインターンシップとして「共育型インターンシップ(インタビューシップ、以下IS)」を、昨年包括的連携協定を締結した県立三木高校との間で2019年より実施してきました。ISは、生徒が社員や経営者に「何のために働くか」「会社は何のためにあるか」などをインタビューしながら、生徒自身が「将来のありたい姿」や「なぜ働くのか」などについて考え、仕事観を養うことを目的としています。

 企業側は、事前に「自社の存在意義」「働く目的」「仕事のやりがい」などを経営者と社員が共有し、社員が生徒に自社を語ることで、理念の浸透や自分の仕事に誇りを持てるようになったなど、社員教育の面でも大きな成果を得ています。理念の成文化を受け入れの条件とし、労使見解に基づいた、人を生かす経営の総合実践を目的としています。

 今回参加した三木高校の1年生からは「ISに参加するまで仕事ということに興味を持てませんでした。仕事は生活のために堅苦しくするものだと思っていましたが、自分の幸せを見つけられる場所だと思いました。特に『人が人を育てる』という言葉が印象的で、人が人を育てることで、仕事のやりがいを感じ、やりがいを次の世代につなげていけるのかもしれない。今回をきっかけに地元の暖かさやよさを見つけることができ、将来地元で働くということを考えるようになりました」といった感想がありました。

 IS後は生徒自身が訪問した企業の理念や、会社の強み、学んだことを発表する成果発表会を行います。今年は、会員企業のみならず行政や金融機関、他校の教員などさまざまな分野から過去最多の約200名の参加者が生徒73名の発表に熱心に耳を傾けました。参加したゲストの中にはこの取り組みに感動し、同友会に入会したいという声もありました。

 三木高校から始まったこの取り組みは現在県下5校との取り組みに広がりを見せています。今後は各地域の生徒をその地域の企業で受け入れ、「地域で若者を育て、地域に若者が残る活動」を進めていき、教育県ならぬ教育の聖地をめざして運動を進めていきます。

*三木高校インタビューシップ成果発表会のニュース映像(KSB瀬戸内海放送)はこちらのQRコードから視聴可能。

「中小企業家しんぶん」 2022年 11月 5日号より