連載「わが社のSDGs」常に挑戦しつづけ、新しい価値を創造する (株)トヨコン 代表取締役社長 明石耕作氏

SDGs(持続可能な開発目標)は、「誰一人取り残さない」持続可能な社会の実現をめざす世界共通の目標です。2015年の国連サミットにおいてすべての加盟国が合意した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられました。2030年を達成年限とし、17の目標と169のターゲットから構成されています。

新連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第2回目は、(株)トヨコン(明石耕作代表取締役社長、愛知同友会会員)の取り組みです。


 愛知県豊川市に本社を置く(株)トヨコンは、包装設計や梱包、資材、物流管理システム、輸送など総合的な物流サービスを提供している会社です。愛知には本社のほか名古屋や安城、また小田原、東京など関東にも営業拠点を置いています。

 同社がSDGsに本格的に取り組むきっかけとなったのは、2020年に作成した10年ビジョンです。会社全体として組織改編を行い、新トヨコングループとしてスタートを切った時期でもあります。10年ビジョンを基に幹部社員が中心となって作成した中期方針(3カ年計画)には、(1)お客様とSDGsでつながる、(2)ステークホルダーとDXでつながる、(3)社員、地域社会とつながるの3つを柱として、それぞれの項目に3つの施策、9つの実施項目を定めています。

 (株)トヨコンが取り扱う商品は物流に関わるもので、梱包資材などは商品が目的地に着けば不要になるものです。「私たちはもしかしたらごみを売っているのではないか?」と考えたこともありました。環境問題にいち早く取り組んでいる欧州向けの商品にはプラスチックの梱包資材は使わないでほしいといった要望もあり、プラスチックに代わる素材を探し始めました。プラスチックは安価で軽く、扱いやすいという利点がありますが、環境問題を考えるとそれに代わるものを探さなければなりませんでした。今や日本でもSDGsが認知され、地球環境に配慮した商品が求められるようになりました。

 2021年8月には、「トヨコンSDGs宣言」も行い、実施項目に基づいて社内ではいくつかのプロジェクトチームも始動。新商品の開発や販売チャンネルの開拓、地域との連携をめざしたイベント企画やDX化など、社員が中心となってさまざまな取り組みが展開されています。

 商品開発では、SDGsに対応する次世代緩衝材商品として「ワッフルパッド」を開発・提供しています。これは段ボール素材で作られた立体緩衝材です。発泡プラスチックなどの石油由来のもので作られることが多いものでしたが、段ボールで作ることで環境への負荷を減らすことができます。ワッフルパッドは、リサイクルが可能、保管・輸送の省スペース化などさまざまなメリットがあり、従来の発泡プラスチックの緩衝材に比べて容積比を4~6割減らすことができます。こうした環境に配慮した商品開発は、脱プラスチックをめざす大手企業からも注目を集め、問い合わせなども増えていると明石氏は言います。

 将来的には、取引先のSDGs導入支援やビジネスの視点からコンサルティングできる専門部署の立ち上げなどもめざしています。

 地域での活動にも力を入れている同社では、スウェーデン発祥のジョギングをしながらゴミを拾う新しいSDGsフィットネス「プロギング」のイベントを地元豊川市で開催しました。大人から子どもまで、幅広い地域の住民が参加し、オリジナルのノベルティなども配布。BtoBが基本の同社を地域住民に知ってもらえるきっかけとなりました。また、小学校やSDGs関連のイベントなどでは段ボールの再利用を考えてもらう「トランスフォーム段ボール(トラダン)」を使った出前講座やワークショップなども開催しています。

 こうした取り組みは、幹部社員が作成した中期方針の実施項目を元に社員が企画立案し、実行しています。実施項目を具体化したことで取り組むべき課題が明確化され、社員の自主性が引き出し、個性を発揮する機会を生むことにもつながりました。

 激変する時代の中、2030年ビジョンで「Transform TOYOKON」を掲げる同社は、SDGsやDXの取り組みを通じて、お客様、ステークホルダー、地域社会とつながり、自社の変革をめざします。

会社概要

設立:1964年9月
従業員数:193名(2023年5月)
事業内容:包装資材および物流機器販売、包装設計、システム開発、倉庫管理業務、梱包業務、組立事業
URL:https://www.toyocongroup.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2023年 5月 25日号より