【わが社のSDGs】社員主導のSDGs推進で働きがいのある会社へ
タイヘイグループ 代表取締役 西森 大氏(高知)

SDGs(持続可能な開発目標)は、2030年を達成年限とし、「誰1人取り残さない」持続可能な社会の実現をめざす世界共通の目標です。連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第12回は、タイヘイグループ(西森大代表取締役、高知同友会会員)の取り組みです。

 (株)タイヘイ、(株)城南タイヘイ、城南(株)の3社で構成されるタイヘイグループは、1930年にセメント瓦の製造・販売からスタートし、現在創業94年目を迎えています。「お客様第1主義を貫く」「働きがいのある会社をつくる」「限りなき挑戦を行う」というグループ共通の経営理念のもと、不動産業やリフォーム、各種住宅設備事業、住宅ローン事業など各社でさまざまな事業を展開しています。

SDGsへのきっかけ

 高知県では、2021年に産業計画の一環として「こうちSDGs推進企業登録制度」が創設されました。地域課題の1つである人口減少を背景に、県内の産業育成のため、SDGsの達成に向けた取り組みを行う事業者を県が登録する制度で、同社は2023年7月に登録されました。

 タイヘイグループは、構成する3社が同じフロアで業務を行っています。そのため各社の社員同士は顔見知りですが、それぞれ企業文化や業務内容、顧客も違うため、お互いがどのような仕事をしているのかを知らないという状態です。そこで、社員のベクトルを同じ方向に向けるために活用したのがSDGsでした。 SDGs推進企業への登録は社員から提案され、社内のコミュニケーション円滑化とともに、社会課題解決や地域貢献などを社員が自分事として捉えられるようにすることをめざしています。

 SDGs推進企業登録後には、SDGs達成に向けた「タイヘイグループの宣言」を打ち出し、重点的な取り組みとして「有給休暇の取得率向上」「ボランティア活動を通しての地域貢献活動拡大」「事業継続計画(BCP)の策定および社員との共有」を掲げました。

SDGsを活用して働きがいのある会社へ

 社内外でSDGs推進を掲げたことにより、その達成がグループ全体の目標となっていきます。

 「タイヘイグループ宣言」に掲げた有給休暇取得率向上はその1つです。それまで、有休取得率向上への意識は各社で温度差がありました。そこで、「宣言」達成に向けて半年ごとに各社の有休取得率を社内で公表。それによって、各社の有休取得率を把握できるようになっただけでなく、結果が「宣言」と乖離(かいり)している企業は有休取得率向上のためにどのように生産性を上げていくかを話し合う風土が生まれました。

 業務のデジタル化にも着手しており、顧客管理システムやビジネス用チャットツール「LINE WORKS」を導入しています。同社は、地域貢献活動の一環として高知県主催のボランティア清掃活動に参加しており、事前に「LINE WORKS」で社内から参加者を募って自主的に地域のごみ拾いなどを行っています。

 SDGs推進企業登録をきっかけに、SDGs達成に向けた方針のもとさまざまな取り組みを通して、働きがいのある会社づくりが進んでいます。

新規事業の取り組み

 高知県では、人口減少・少子高齢化などによる複合的な課題が増えており、その対応の一環として県内の企業・団体・行政などがつながる「高知型地域共生社会」を推進しています。同社も、さまざまな企業が参加するワークショップへの参加を通して、事業の中で地域に貢献できるものは何かをグループ内で議論していきました。そして、「本業の中でリサイクルができないか」「産業廃棄物をなくしたい」という自社のありたい姿が明確になっていき、プロジェクトチームを発足させて新規事業をスタートさせます。

 その1つとして、廃材として処分していたガラスを活用したフォトフレームやキーフックの制作に取り掛かっています。県内のガラス工芸作家などと協力しながら試作を進め、産業廃棄物の最終処分率の減少とともに、製品化することで自社の付加価値向上をめざしています。

社内外で魅力をPR

 同社では、若手社員が中心となってタイヘイグループのインスタグラムを運用しており、SNSを活用して事業内容などを外部発信しています。「SNSを活用して県全体のIターン・Uターンを増やしていきたい」と話す西森氏。まずは自社や社員の紹介として『#働く男子シリーズ』や『#お仕事シリーズ』などシリーズ化した動画を制作したり、さらに、高知県の魅力も伝えられる媒体にアップデートしたりと、今後はホームページの充実も図りながら、さらなる魅力発信に力を入れていきます。

 SNSの活用は、社内にも向けられています。社内でのコミュニケーションを課題としていた同社にとって、社員やそれぞれの業務内容を発信しているインスタグラムは、お互いを深く知り合うためのツールにもなっています。「徐々にお互いの見え方が変わってきた」と言い、気軽に閲覧できるSNSの特長を活用した取り組みです。

 西森氏は、「地域に会社があることによってその域で暮らす社員の生活も成り立つ。そのためには働きやすい環境づくりなどさまざまな取り組みが必要で、いろいろなことに挑戦していくことがわが社の企業文化」と語ります。

 チャレンジ精神を持つ社員たちのアイデアをビジネスとして実現するため、さらなる挑戦を続けます。

会社概要

設立:1930年
社員数:40名
事業内容:各種建築資材施工販売(サッシ、屋根、板金、給排水、住設機器、空調工事)太陽光発電システム、耐震工事、リフォーム、浄化槽維持管理、土地建物取扱業、ライフプランニング、各種保険
URL:http://www.taiheig.com/

「中小企業家しんぶん」 2024年 5月 15日号より