労使の共通課題を論議 連合との「第10回意見交換会」【中同協】

 4月24日、中同協と日本労働組合総連合会(以下、連合)の意見交換会が東京で開催され、中同協から広浜泰久会長など7名、連合からは清水秀行事務局長など8名が出席しました。

 冒頭、それぞれから「持続的な賃上げや地域の活性化につながるよう連携を強化していきたい」(清水事務局長)、「労使が協力して1人1人がすばらしさを発揮できる社会に」(広浜会長)とあいさつがありました。その後、4月18日に発表した「中小・小規模事業者の適正取引と持続的に賃上げできる環境整備に向けた共同談話」について紹介がありました(下記掲載)。

 続いて中同協から景況調査や経営実態アンケートの結果などを報告。連合からは、2024年春闘の状況や地方版政労使の取り組みなどについて報告がありました。

 次に原材料や労務費の価格転嫁の問題について、中同協からそれぞれの企業や業界の状況などを発言。また、中同協と連合から中小企業振興基本条例の取り組み事例などを紹介し、意見交換を行いました。

 最後に「厳しい経営環境の中、共通する課題はしっかり手を組んで乗り越えていきたい」(中同協・中山英敬幹事長)、「労使がともに手を取り合って協力し合えることは多いと感じた。今後も意見交換をお願いしたい」(連合・村上陽子副事務局長)と閉会あいさつがありました。

中小・小規模事業者の適正取引と持続的に賃上げできる環境整備に向けた共同談話

 中小・小規模事業者(以下、中小企業)は経済を牽引する力であり、社会の主役である。雇用の大部分を支える中小企業の振興と賃上げの実現は、日本経済の安定的な発展と国民の暮らしの向上に不可欠である。

 現在、多くの中小企業は、原材料費やエネルギー価格などの急激な物価上昇や労務費によるコスト増加を価格転嫁できず、さらに人手不足の深刻化や経営環境における厳しさも増す中で、経営改善・事業再生等の伴走支援が必要である。

 このような状況を踏まえ、中小企業家同友会全国協議会と日本労働組合総連合会は、下記の取り組みを推進するために共同談話として確認した。

1.サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配と価格転嫁の促進

 地域経済の担い手である中小企業の経営基盤を強化するためには、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配と、働き方を含めた「取引の適正化」の推進並びに独占禁止法や下請法の厳格な運用が不可欠である。政府が公表した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を活用するため、中小企業の経営者はもとより、広く社会全体に認識され十分に浸透させる必要がある。そのうえで、価格転嫁が進んでいない産業・業種への対応を進めることにより、労務費を含む価格転嫁が促進されるよう実効性の確保に取り組む。

2.「パートナーシップ構築宣言」にもとづく価格交渉の推進

 地域資源やそれぞれの業界の強みを生かし地域社会を活性化させるため、「パートナーシップ構築宣言」(以下「宣言」)の一層の拡大が必要である。そのためにも、受注者と発注者との価格交渉時に「宣言」にもとづく対応を行うなど、価格交渉を通じた適正な取引環境の整備について、全ての業界へ浸透・拡大させることを推進する。

3.持続的に賃上げできる環境整備の推進

 成長と分配の好循環には、中小企業等の業績改善と働く人の生活向上を持続的に実現していく必要がある。経営環境の整備はもとより、中長期的な視点を持って人への投資を推し進めつつ生産性や付加価値を向上させるなど、賃金の引き上げにつながる取り組みが求められる。

 そのためにも、政府には、中小企業の持続的発展や生産性向上につながる支援強化(事業再構築、スキルアップ、DX・GXへの対応)や社会保険料の増加抑制などを求め、中小企業が持続的に賃上げできる環境整備を推進する。

 中小企業の賃上げを持続的・継続的に広げていくためには、コスト増加分の価格転嫁は必須であり、取引の適正化に資する取り組みを着実に行っていくことが重要であるとの認識で一致した。

 中小企業家同友会全国協議会は、地域と中小企業が持続的に発展できる環境をめざして政策提言活動を行い、「人を生かす経営」の実践や働く環境づくりを推進している。また、日本労働組合総連合会は、働く仲間の生活を守るため、様々な行動を通じて持続的に賃上げできる環境整備に向けて取り組みを進めている。

 中小企業家同友会全国協議会と日本労働組合総連合会は、今後さらに連携を強化しつつ、労使共通の課題を共有し、地方経済の活性化と中小企業の経営基盤強化、持続的に賃上げできる環境整備に向けて、それぞれの立場で政府や関係省庁などへの要請に取り組む。

以上

2024年4月18日
中小企業家同友会全国協議会 会長 広浜 泰久
日本労働組合総連合会 会長 芳野 友子

「中小企業家しんぶん」 2024年 5月 15日号より