【若者に選ばれる企業へ】
採用と教育による企業改革~社員と共に歩む企業づくり
(株)ソアーシステム 代表取締役社長 大脇耕司氏(東京)

 採用と社内環境改善を一体として取り組む企業を紹介する新連載『若者に選ばれる企業へ』。第1回は(株)ソアーシステム(大脇耕司代表取締役社長、東京同友会)の実践です。

 当社は家電製品や事務機器を動かすプログラムを作る「組込みシステム開発」から、クラウドシステムやデータベースシステムを使って業務システムを作る「ITシステム開発」まで幅広いシステム開発を行っています。私は当社に新卒入社し、2010年に代表取締役に就任しましたが、もともと技術者だったため経営に関する知識がまったくなく、経営の勉強のために同友会に入会しました。同友会(特に共同求人委員会)に参加して以降は、他社のさまざまな取り組みを学び、自分なりに実践することで自社や自分自身の改善を進め、結果として売上・社員数を伸ばすことにつながったと思っています。

ビジョンと採用がリンクする

 同友会に入会した最初の数年は、交流することが目的でまったく勉強しませんでした。ビジョンもなく、企業風土の改善も後回しにしていたため社員の定着率は低く、徐々に10年後の自社の姿が見えなくなっていきました。「人件費はコスト」と考え、2009年から2013年は採用活動も休止、社員数も29名まで落ち込みました。このままではいけないと思い共同求人委員会に積極的に参加するようにしましたが、「採用した人材を社内で教育すれば何とかなる」と考え、最初の数年は大失敗しました。

 共同求人活動で、合同企業説明会や学校での講義、「経営者と語る会」などを経験し、経営者である私自身が自社の本当の魅力を分かっていないこと、魅力的に語れていないこと、社員が納得感のある職場を作れていないことなどに気づきました。そこで採用活動を進めるとともに、経営方針・ビジョン・数値目標を明確にし、分析と改善を繰り返しながら社内で現状の評価と課題を共有することで、徐々に会社の未来と採用の必要性がリンクしていきました。

社長自らが採用に関わる意味

 企業の存続には新しい人材の登用が不可欠です。「売り上げが先か採用が先か」ではなく、経営計画やビジョンの達成に向けて、経営者自らが採用する覚悟を持って関わることが重要だと思います。社長自身が経営計画や10年ビジョンを学生に繰り返し伝えることで、結果として社内外に経営計画やビジョンが浸透していきます。また現在の経営課題や改善ポイントも見えるようになり、自社改善が進みます。社員と共に企業理念や経営計画を考えたり、毎年就業規則や就業環境の見直しを行ったりすることで、徐々に企業の魅力がアップ、社員が定着・活躍し、企業が強くなっていきます。経営計画とビジョンを明確にし、採用と社員教育を一体として取り組むことが重要です。

企業変革と知ってもらう活動

 共同求人は自社改善のための活動です。採用活動を通して自社の強み・弱みを再認識し、企業風土を改善することができます。しかし、いくら企業改善を繰り返し、社内環境を整備しても待っているだけでは認知度は上がりません。知ってもらうために、ぜひ同友会の共同求人活動を有効活用してほしいと思います。共同求人の活動においては、個別の企業として自社を知ってもらうのではなく、全国で同じ目標に向け取り組んでいる団体の一員というブランドをアピールすることで、学生や学校の皆さんに、私たちの魅力を印象付けることができると思います。

 また、自社のいいところはもちろん、抱えている課題までも知ってもらえるような活動を行うことで、そこに共感してくれた学生の入社後の定着率も上がります。

 これからも共同求人活動を積極的に活用しさらに自社の改善を行い、誠実に自分たちのことを知ってもらう活動を続け、多くの学生に選ばれる企業づくりを行っていきたいと思います。

会社概要

設立:1981年
事業内容:ITシステム開発(サーバ、DB、アプリケーション)、組込みシステム開発(通信機器、制御機器、プリンタ)、お客様システムの保守・運用サポート、システム導入コンサルティング
社員数:56名
URL:https://www.soarsystem.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2024年 5月 15日号より