【企業変革支援プログラムの活用】
企業変革支援プログラムの活用で、経営指針に基づく経営を実践する

 中同協は、2022年10月に『企業変革支援プログラムVer.2』を発刊しました。今回は、中本久美・大阪同友会副代表理事の活用事例を紹介します。

 2009年に『企業変革支援プログラムステップ1』が発刊され初めて手にした時の感動は今も忘れることができません。よい会社をめざそう、よい経営者をめざそうとよく聞く同友会の3つの目的のうちの2つについて、よい会社とはどんな会社なのか、よい経営者とはどのような経営者像なのか簡単に答えることができなかった私にとって、「レベル5」をめざせばいいんだ!と妙に納得できたのです。

 それから毎年私自身はもちろん、幹部社員と『ステップ1』のチェックをし、その中のいくつかに的を絞り、『ステップ2』をヒントに具体的な今後の取り組みについて議論を重ねていきました。中でも印象的な項目は、顧客満足度の把握でした。「アンケートを実施してみよう」から始まり年々その精度や効果を幹部社員と議論し、ある年には公表していない電話番号を「社長直通FAX番号」としてアンケートの回収率を上げるなど、本音を引き出す工夫が出た時は幹部社員の成長を実感しました。顧客からの声を次年度の経営計画に盛り込み実践していくと、企業価値を高めることにつながっていきました。またある時には、経営者の自己変革の項目から「リーダーシップ」について議論しました。さまざまな意見から10人の幹部がそれぞれお互いを認め合う多様性にまで議論が発展したこともありました。

 そのような議論を通して社員とのコミュニケーションの質も向上し、経営指針に基づく経営がより効果的なものとなっていきました。その結果、思いも寄らないM&Aの話が舞い込み、大企業との月次会議にも肩を並べて議論ができるまでになっていました。行き当たりばったりではなく、PDCAを意識した方針から計画、実行の流れが身に付いているためです。

 今は小規模な企業経営ではありますが、社員が生き生きとそれぞれの持ち場で働く姿は企業変革支援プログラムを毎年欠かさず取り組むことでめざすべき企業像があり、よい会社、よい経営者をめざし続けているからにほかなりません。経営指針書は社員とのコミュニケーションツールだと言われていますが、その中身を埋めるツールとして企業変革支援プログラムがあるのだと確信しています。

 企業支援プログラムが最初に発刊されてから10年が経過し、改訂作業を始めるということを知り、本質を学ぼうとプロジェクトに自ら参加させていただきました。大阪同友会で初めて企業変革支援プログラム推進部ができた時に部長を拝命し、『ステップ1』を広める活動に携わったのですが、よく耳にしたことは、なんだか難しいという感想です。特に『ステップ2』は見もしないで難しいと言われたこともしばしばありました。組織経営をしている経営者は組織を動かすには仕組みが必要だと実感しているので共感してもらえるのですが、小規模ほど経営者自身が全てを担い、プレイヤーであることが多く、そのような経営者はセルフチェックが必要だと考えていない方が多いのでしょう。企業変革支援プログラムのよさに触れようともしないことが多いなと残念な思いになることもありました。

 そのためプロジェクトで大切にしたことは、ステップ1と2を合冊し、より多くの会員に手に取ってもらいやすく理解しやすいようにすることです。可能な限り平易な表現にするなど工夫を凝らしました。それでも難しいというイメージを払拭するのは容易ではありません。プロジェクトに参加した者として、まずは「エントリー自己診断」から始めてみることを推進していこうと思います。すべての項目を1度に取り組む必要はなく、気になる項目から具体的な取り組みを検討していけばよいと思います。今は役員研修部を率いている立場ではありますが、地道に推進活動を継続してまいります。

大阪同友会副代表理事/役員研修部部長、(株)シージェイエル代表取締役 中本久美

「中小企業家しんぶん」 2024年 6月 15日号より