【若者に選ばれる企業へ】
働きやすい職場環境づくりで、業界の担い手を育てる
山本工機(株) 代表取締役 山本成年氏(埼玉)

 採用と社内環境改善を一体として取り組む企業を紹介する新連載『若者に選ばれる企業へ』。第2回は山本工機(株)(山本成年代表取締役、埼玉同友会)の実践です。

 当社は、鋳造や切削加工技術を用いて社会インフラ設備部品に特化して製造しています。送電線をつなぐ部品や大型船のエンジン用部品、MRI用部品、さらには降雨量や風速量の計測機械など環境設備用部品も製造しており、世界中のあらゆる場所でわが社の製品が利用されています。

スパルタ指導者からの変化

 私はもともと商社に勤めており、2002年に父が営む山本工機に入社しました。当時は社内に活気がなく、膨大な借金を抱えたボロボロの状態でした。入社直後は社員を「仕事のできないダメな人たち」と見下してスパルタで接し、辞めていく社員のことは「足切りができてちょうどいい」とさえ思っていました。

 まずは仕事量を増やすために営業活動に力を入れ、ホームページの制作にも着手しました。徐々に受注が増えて客層も広がっていきましたが、仕事量に人手が追い付かず、私自身365日休みなしで働き、社員も長時間残業や休日出勤が常態化。定着率は低く、社員も私も体力的・精神的に疲弊していました。

 そんな中、2005年に外国人技能実習生を採用すると、純粋で一生懸命仕事をする彼らの姿を見て社員の仕事に対する姿勢が変わっていきました。社員たちの変化をみて、私自身も社員への関わり方が変化していきました。

働き方改革推進企業へ

 2017年に社長に就任し、埼玉同友会の経営指針に関わるセミナーに参加すると、自分には経営者としての姿勢や思考が足りないことに気づきました。その後、経営指針の作成を通して、中長期計画実現のためには新たな社員が必要と考え、2019年から共同求人委員会に参加します。参加の必須条件である就業規則は、社労士と相談しながらその時に初めて作成しました。

 同時に、他社から学びながら働く環境の整備にも取り掛かります。年間休日数の目標を設定し、1日分の仕事量の調整などを続けた結果、105日から121日まで引き上げることができました。また、コロナ禍で仕事量が減少する中、全体の作業量と工程管理を見直し、国の補助金も活用することで週休3日制を導入。有給休暇を使用すると週休4日も可能になるため、有休消化率も向上して100%を達成しました。全体の作業量が下がらないよう、シフト制を導入して昼休みも工場を稼働させ、特定の社員にしかできない仕事も減らして、残業時間は月平均5時間まで減少しています。

 また、5社が輪番制で毎月1社を訪問して3S(整理、整頓、清掃)をチェックする「合同3S活動」にも取り組んでおり、効率的な動きができるよう自ら考える訓練になるとともに、各社の社員が切磋琢磨(せっさたくま)しながらコミュニケーションを深めています。

 共同求人委員会に参加してからは毎年新卒採用ができており、さまざまな取り組みを実践してきた結果、働き方改革に積極的に取り組む企業として2021年に埼玉県の「働き方改革推進モデル企業」10社のうちの1社にも選出されました。

共同求人は将来の仲間を増やす活動

 埼玉同友会の共同求人委員会では、県内公立高校での課題解決型授業や大学でのキャリア支援授業、学内合説など学校と連携した取り組みが広がっています。自社の採用力向上とともに、県内に多様な企業があることを発信して、夢中で仕事をしているわれわれ経営者の姿を見せることで働くことの魅力も伝えたいと思って活動しています。

 わが社のビジョンは「地元の小学生が社会科見学に来る企業」です。子どものころからものづくりに携わって興味を持ってもらうことで、将来同じ業界で働いてくれるかもしれません。「働きたい」と思われる企業になるためには自社のビジョン・将来像をはっきりと伝えること、そのために経営者が大きな目標・志を持つことが重要だと思います。

会社概要

設立:1959年
資本金:1,000万円
事業内容:ポンプ部品・半導体設備部品・医療機器部品・建機部品・架線金物・気象設備部品
社員数:16名
URL:https://www.yamamoto-kouki.com/

「中小企業家しんぶん」 2024年 6月 15日号より