【若者に選ばれる企業へ】
新たな仕組みの導入で、働きやすさと人時生産性の向上をめざす
(有)小田商店 代表取締役 小田大輔氏(徳島)

 採用と社内環境改善を一体として取り組む企業を紹介する新連載『若者に選ばれる企業へ』。第3回は(有)小田商店(小田大輔代表取締役、徳島同友会)の実践です。

 当社は水道の設備部品の販売を行っています。本店の倉庫に並んでいるだけでも約1万種類、会社全体では15万点ほどの商品を取り扱っています。

会社を変えた2つの転機

 当社は祖父が機械工具の販売会社として創業した会社です。私は3代目として20年ほど前に代表取締役に就きました。

 私が代表取締役になったころは日曜日しか休みがなく、朝から晩まで働くブラック企業でした。そのころの従業員数は10人ほどでしたが、採用してもすぐに人が辞めていく状況。そのため人を選べる環境ではなく、応募してきた人を順番に採用していました。

 そんな状況が変わるまでには2つの転機がありました。

 1つ目は、採用を社員に委ねたことです。きっかけは私がドライバーとして中途採用した社員が玉突き事故を起こしたことでした。実はその社員は8年間運転していないペーパードライバーだったのです。社員から激しく怒られ、これをきっかけに社員に採用試験や面談を行ってもらうことにしました。すると徐々に社内の雰囲気が変わり、今では継続的に新卒・中途採用ができるようになっています。

 2つ目は、商品の値上げで利益確保を行ったことです。利幅を確保することで経営革新の原資ができ、週休を2日にすることができました。

 こうした経験を通じて、採用・教育や利益確保の重要性を学びました。

人時生産性や働きやすさの向上へ

 そこで導入したのが商品を管理するバーコードシステムです。社員の働きやすさと収益性を両方とも向上させることを目的に取り入れました。

 これは全商品にバーコードを付け、仕入れや販売の際に社員がスマホで読み取り商品を管理する仕組みです。このシステムを運用することにより、仕入れから販売までの状況を誰もが一目で把握できるようになりました。そして現在では、社員自身が収支分析を行い新たな戦略を立てられるようになっています。

 システムから得た情報を基に、新たな取り組みも始めました。まず、営業時間の短縮です。従来当社は午後6時まで営業していました。しかしデータを見ると午後5時以降はほとんど売り上げがないことが判明。社員からのヒアリングも踏まえ、午後5時に閉店することにしました。同様の理由から、日曜日も休業日としました。

 こうした取り組みにより人時生産性や働きやすさが大きく向上しました。しかしさらなる改善のため、外部チェックにも力を入れています。例えば、インターンシップに来た学生や県の初任者研修(教員が民間で職業体験を行う事業)に来た先生に『企業変革支援プログラムVer.2』を用いて当社を評価してもらっています。これをきっかけにマニュアル整備やダイバーシティといった課題が見つかりました。

今後の展望

 人口減少が加速しており、人手不足は大きな課題です。そのため、業務を効率化して人時生産性を上げ、企業を成長させることが重要です。

 当社では今後、AIやChatGPTを積極的に活用することをめざし、方法を模索しています。もちろん、こうした新たな取り組みには費用が必要であり、すぐに結果が見えないこともあります。非製造業の中小企業でも研究開発は設備投資と同じように長期的に見て大きな費用対効果を生みます。長期的な視点を持ち、人口減少社会でどう生きるか、どう経営していくのかを考え続けることが重要ではないでしょうか。

会社概要

設立:1953年
資本金:2,500万円
社員数:16名
事業内容:水道部材の販売等・定款記載業務
URL:https://odss.jp/

「中小企業家しんぶん」 2024年 7月 5日号より