同友エコ受賞企業(会長賞) 
ESGの視点を軸にサステナブルな社会の実現へ 
(株)朝日ラバー 代表取締役社長 渡邉陽一郎氏(福島)

 同友エコ2023―2024受賞企業を紹介する連載。第1回となる今回は、会長賞を受賞した(株)朝日ラバー(福島同友会会員)の取り組みを紹介します。

 (株)朝日ラバーは工業用ゴム製品の製造・販売を事業としています。

 「色と光のコントロール技術」「表面改質及びマイクロ加工技術」「素材変性技術」の3つのコア技術を基に、「自動車・照明」「医療・ライフサイエンス」「機能」「通信」の事業領域でさまざまなゴム製品を生み出しています。新製品を創出するにあたっては、オープンイノベーションを積極的に行い、先端技術を取り込んでいます。

 環境経営に取り組み始めたのは2000年ごろ。1998年の上場をきっかけにISO9001、14001を取得し、品質・環境方針を軸に事業を展開していきます。

 2020年に、経営の軸をSDGs/ESG経営とするため「サステナビリティビジョン2030」を定めました。ビジョンでは、ESGの取り組みを経営の基本的枠組みとし、各事業に関連するSDGsを位置づけて事業を展開することで、サステナブルな社会の実現をめざすことを示しています。

地球にやさしいものづくり

 現在、国内にある4つの工場で使用している電力のうち、約12%が工場の屋根に設置された太陽光パネルの電力で賄われており、残りの購入している電力はすべて再生可能エネルギー起因となっています。また、電気自動車とV2Hシステムを導入し、非常時は電気自動車のバッテリーからV2Hシステムを経由して電力を工場のサーバーネットワークに供給するBCP対策も講じています。

 全社を挙げた省エネ活動の推進としては、全社委員会の活動として「環境・省エネ委員会」を毎月開催しています。さらに、委員会活動を波及させるため、より具体的な活動を推進する「省エネ分科会」を各工場に立ち上げました。

 活動の一環として、工場で使用しているエネルギーを見える化し、電力を削減する活動を行っています。このような具体的な活動事例や、省エネの成果は月初に行われる報告会で全社員に向けて情報を発信しています。また「人にやさしいものづくり委員会」では、エネルギーの削減で得られる利益を計算し、業務の改善効果の一環として、年度末の賞与に上乗せするという仕組みがあり、省エネ活動の推進を促しています。

 温室効果ガス排出量削減の取り組みとしては、昨年、外部の先生からGHGプロトコルに基づいた研修を受け、スコープ1、2、3の排出量を把握しました。今年度より仕入れ先に対して説明会を通して情報を共有していく予定です。

人にやさしい会社づくり

 社会貢献活動として、工場の最寄り駅である泉崎駅の清掃活動を1995年から行っているほか、幼稚園や小学校でゴムのワークショップや出前授業を行う「ありがとうプロジェクト」や、障害者施設研修を実施しています。

 また、卓球ラケット用ラバーを製造していることから、県内外の小学生からシニアを対象にした「朝日ラバー杯卓球大会」を開催。毎年大きな盛り上がりを見せています。こうした地域とつながる活動を通して、朝日ラバーがどんな会社なのかを知ってもらいたいとの考えから取り組んでいます。

 働きがいのある職場づくりの一環としては、今年度「Well―being向上会議」を新設し、若手社員が中心となって働きやすいルールの検討などを行っています。休暇制度の見直しなど、会議で決定された新しい取り組みが実際に実施されています。

 また、大学研究室の社会人選抜枠の博士後期課程で学べる制度など、成長できる環境を整えています。海外で交渉する際、「Ph.D」の肩書きは大きな武器で、朝日ラバーの海外進出に欠かせない要素になります。

環境経営の先頭へ

 「ビジョンに沿って定量目標を設置し、それらを通過点として超えていくことが私たちの環境経営のあり方です。環境問題は今や国際的なものになっていますが、朝日ラバーは地に足をつけた改善を重ね、それらを周りの方々と共有し、地域に広げていく先頭を走りたいと考えています」と語る渡邉氏。持続可能な地域と社会に貢献する企業として、成長を続けます。

会社概要

設立:1976年6月
社員数:317名
事業内容:工業用ゴム製品の製造・販売
URL:https://www.asahi-rubber.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2024年 7月 15日号より