同友会における調査活動の歩み~同友会景況調査(DOR)150号を迎えて(中同協)

 同友会の調査活動は、会員企業の景況の推移の蓄積にとどまらず、中小企業の実情を会内外に伝える媒体として30年を超えて活動を継続してきました。その歩みを振り返ります。

同友会の調査のあゆみ

 中同協で初めて全国の会員を対象に調査を実施したのは、1978年3月の「中小企業の業況・意識・ベア見込みアンケート調査」でした(20同友会・8400社対象、総回答数は1330社)。長期不況と円高急騰の状況下、中小企業の実態を探り、(1)企業努力の方向を示し、(2)経営環境改善の課題を明らかにすることを目的としていました。全国の会員を対象とした調査は数年間にわたって実施され、その後各同友会での独自調査につながっていきました。

 中同協では1988年から常設の調査研究機関の設置が検討され、政策委員会が中心となって同友会と関わりのある研究者の助言を得ながら準備を進め、1989年に企業環境研究センター(当時の名称:景気・産業構造動向調査研究会、以下研究センター)が発足しました。発足時の主な構想の1つだった景況動向調査は、予備調査を経て90年の第14半期(1~3月期)から全国同友会の会員企業を対象に開始、全国の会員の協力のもと現在まで34年間継続され、2024年4~6月期でDORの報告書は通算150号を迎えました。DOR(ドール)という通称(同友会景況調査:DOyukai Researchの頭文字をとったもの)で、現在は約2400社の対象のうち1000社以上の回答をめざして実施しています。

調査活動で得られたこと

 調査を重ねることで、(1)回答プロセスを通じて定期的な自社経営の点検の一助、(2)会員の経営実践の取り組みの集約と還元(調査結果を整理し、現在の立ち位置、計画修正などを考える資料として)、(3)定期調査を基礎にさらなる調査テーマの掘り下げの契機、(4)行政や金融機関との協議や政策活動への基礎資料として、各方面で活用されています。

 また、DORでは四半期ごとの景況調査を基本に、その時々の経営課題に関する設問を設けています。その中に経営指針の確立と実践に関する調査があります。経営指針の「ある」「なし」で企業の業績を比較すると明確な差が出ました。さらに「経営理念」、「経営ビジョン」、「経営方針」、「経営計画」をセットで持っている企業、経営指針の社内、社外への公開の有無、と企業づくりの取り組み内容を細分化して分析していくと、よりその差が明確に示されました。

 このように、調査時点での会員企業の実情だけでなく、同テーマの定期的な調査を重ねることで運動の進展を経年で確認できるようになりました。同友会が推進してきた企業づくりを客観的な指標で共有することが可能になったのです。調査活動そのものが同友会活動の積み重ね、経験や成果を立証する機会になっています。

全国の調査活動について

 各同友会の調査活動としては、2024年7現在、32同友会で定期的な景況調査が実施されています(図)。頻度は年1回(9同友会)、半年に1回(10同友会)、四半期に1回(12同友会)、4カ月に1回(1同友会)と各同友会のペースで行われています。

 また、定期調査に加えてインボイスや価格転嫁、賃上げ、事業継続、経営課題等などをテーマに14同友会で特別調査や緊急調査が実施され、石川同友会では能登半島地震影響調査も行われました。

 調査活動の意義を明確にし、組織的な取り組みとして位置づけることで5割を超える高回答率を達成・維持につなげる同友会も出てきました(兵庫2217社中1635社:74%、広島3009社中1592社:53%)。積極的な調査結果のフィードバックと共有により回答率向上に反映されています。また、自社経営や同友会の強化への実感につながるよう意識したデータ活用や調査活動の仕組みづくりにより、行政や関係機関との対談の際にも生かされて対外的評価を高めている同友会も出てきています。

 中同協では企業環境研究センター主催で2024年3月に「調査活動情報交換会」を実施し、同友会の調査活動の実践に学びました。来たる8月2日には、DOR150号発行を記念して、地域経済と地域中小企業の課題をテーマに各同友会で長年景況調査に携わってきた研究者による報告を予定しています。

「中小企業家しんぶん」 2024年 7月 15日号より