【わが社のSDGs】SDGsへの取り組みを強みに、選ばれ続ける会社へ
(株)スリーハイ 代表取締役 男澤誠氏(神奈川)

SDGs(持続可能な開発目標)は、2030年を達成年限とし、「誰1人取り残さない」持続可能な社会の実現をめざす世界共通の目標です。連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第15回は、(株)スリーハイ(男澤誠代表取締役、神奈川同友会会員)の取り組みです。

 (株)スリーハイは、産業用電気ヒーターの製造販売でお客さまの「熱のお困りごと」に向き合う、横浜市にあるヒーターソリューションカンパニーです。徹底したお客さま目線でさまざまな形状のヒーターをオーダーメードで製造しており、自社ECサイトにも力を入れて購入・ 問い合わせのしやすさを大切にしています。

 社員の約7割が市内在住、従業員に占める女性の割合が7割を超え3名がリーダーを務めるなど、地域雇用や女性活躍も目覚ましい企業です。近年は海外展開にも力を注ぐと同時に、海外からの企業視察や留学生のインターンも積極的に受け入れており、ものづくりで世界中の「温めたい」に応えるグローバルニッチ企業をめざしています。

地域の教育機関 NPOと連携

 同社は横浜市都筑区東山田の「東山田準工業地域」にあり、70ほどの工場のほか住宅や学校も多いエリアです。

 地域住民との信頼関係を築き、ものづくりの魅力を地域の子どもたちに知ってもらおうと男澤氏が2013年に始めたのが「こどもまち探検」でした。周辺企業の協力も得て地域の小学生がさまざまな工場を見学・体験するこの活動は、「従業員にとっても自社の魅力や仕事に対する想(おも)いを再認識する機会になっており、女性従業員の多くがこの地域の住民でもあることで、自分事として捉え取り組んでくれているように思う」と男澤氏は語ります。中学校の職場体験の受け入れや、NPO法人と連携した県内高校の「総合的な探究の時間」への授業協力も行い、未来をつくる子どもたちへ目を向けた取り組みに力を注いでいます。

工場カフェ「DEN」の活用

 (株)スリーハイがSDGsに積極的な企業として多方面から注目を集めるようになったきっかけのひとつが、工場カフェ「DEN」です。地域の人たちがものづくりを間近に見られる場、住民同士が交流のできる場として2017年のオープンから多くの人に親しまれてきました。

 現在は、「東山田食堂&シェアごはん」という名称で月に1度、地域住民が地元農家や食品工場の規格外を含む食材を活用したお弁当の製造・ 販売を行っています。地域ケアを行う横浜市の施設と連携して“お困りごと”を抱える方々へお弁当を届けたり、小学校の支援学級に通う子どもたちの体験活動を行ったりもしています。不登校児のためのプログラミング講座の場としても使用するなど、“熱”以外の困りごとにも目を向け、地域を温め続けています。

SDGsは中小企業の強みになる

 日本でSDGsの取り組みが始まった2016年、同社はすでに4度目の横浜型地域貢献企業に認定されるなど、CSRから派生し現在のSDGsに当たる活動を行っていました。近年は、学生が就職先を選ぶ際に企業のSDGsに着目していたり、大手取引先が仕入先のサプライチェーンも含めたSDGsへの取り組みについてヒアリング調査を行っていたりと、学生やお客さまに選んでもらうためにも重要な分野であると男澤氏は語ります。生活圏内に勤務地がある従業員にとっては、SDGsで地域に関わることが誇りにつながることも多く、地域に温かさを循環させることが自分たちのバリューになります。中小規模の企業では企業理念などが浸透しやすく、地域や子どもたちに特化することで地域住民兼従業員の意識が高まり、一丸となって取り組むことができるため、中小企業こそSDGsへの取り組みが強みになり得ると考えての実践です。

 SDGsを軸に地域とつながり、採用、社員教育、事業の発展へとつなげてきたスリーハイ。「ものづくり」の温かさを世界へ、そして未来へ伝えることをめざしてこれからも挑戦を続けます。

会社概要

設立:1990年
社員数:43名
事業内容:産業用電気ヒーターの製造 販売
URL:https://www.threehigh.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2024年 7月 25日号より