新紙幣発行でキャッシュレスが増加する

 現在のキャッシュレス比率は、経済産業省「2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました」のデータによると、民間最終消費支出の36.0%、111兆円を占めます。韓国の93.6%、中国の83.0%、イギリスの63.9%(いずれも2020年の数値)と比べると日本のキャッシュレス化は遅れていますが、それでも2010年(決済額:38.3兆円、比率:13.2%)と比べると決済額は3倍、比率も3倍弱と伸びてきています。

 特にコロナで非接触が求められた20年以降の伸びが加速し、22年はクレジットカードが前年比で12.8兆円増・2.7ポイント増、コード決済も2.6兆円増・0.8ポイント増で割合を伸ばしています(表)。

 これに23年の傾向を加味してみると、「23年の(QRコード)決済回数は93億回と22年に比べ3割増え」、「決済回数が最も多かったのはクレジットカードの178億回(22年比13%増)。QRコードが続き、交通系ICサービスなどの電子マネーは61億回(同5%増)」と、コード決済の伸びが顕著なことが分かります(日本経済新聞2024年7月8日)。QRコード決済のうちPayPayが7割の61億回で、登録者数は6,400万人(楽天ペイが2番手で、d払い、auペイ、メルペイが続く)、運転免許証などで本人確認を済ませた利用者が6月末で3,000万人とユーザーの5割まで到達。その利用者数は銀行の顧客数に匹敵、23年の銀行間国内振り込み16億件に対して、PayPayの個人間送金も2.8億件まで増加、3年前の2%から17%まで急拡大しているのを見ても、コード決済の急増がうかがわれます(日本経済新聞2024年7月2日)。クレジットカードと併せて伸びる予想です。

 そのうえで今回の新紙幣発行。金融機関やスーパーのレジ、駅の券売機は対応済みが9割を超えています。一方で自動販売機は23年に209万台と10年で15%減となってはいるものの、数が多すぎて対応済みは2~3割にとどまっており、飲食店の券売機も同様です。このような状況から見ても、コード決済の増加が予想されますし、銀行の店舗は20年で3割減、クレジットカードの発行枚数は約3億枚(23年)でさらに使用増加が加速するとの見方ができます。ということは、今後企業として、クレジット決済とコード決済の両方に対応できないとモノが売れないという事態になることも想定して、早めに対応しておくことが必要になります。

「中小企業家しんぶん」 2024年 7月 25日号より