全国支部長インタビュー 第24回 
岩手同友会・岩手リアス支部 橋詰真司支部長((有)橋勝商店代表取締役) 
「震災を乗り越え、世代を超えて学び合う伝統を継承する」

 全国の支部・地区を紹介する連載企画「全国支部長インタビュー」。第24回となる今回は、岩手同友会・岩手リアス支部(橋詰真司支部長)の取り組みを紹介します。

 岩手リアス支部の前身の気仙支部が県内初の沿岸支部として創立したのは、2007年7月のことです。当初28名でスタートした支部は、わずか3年半で88名の会員にまで増えました。

 当時から田村満氏((株)高田自動車学校取締役会長)、を支部長に、河野通洋氏((株)八木澤商店代表取締役)がタッグを組み、年代、世代を越えていつも冗談を言い合いながらも時に厳しく問い掛け合い、何人か集えば軒先でグループ討論が始まるほどでした。

 大切にしてきたのは、地域の人口動態データを基に、人口が減少する中で「地域の企業を1社もつぶさない、つぶさせない」とスローガンを掲げ、経営指針をど真ん中に据え、社員と共に育ち合う会社づくりに愚直に向き合ってきたことです。その理念が地域全体に伝わり、毎月の例会には行政や金融機関、ゲストの参加も多く、全体の参加者は常に会員数よりも多いほどでした。そして「さあ年度末までに100名支部実現へ!」と意気込んでいたその時に、東日本大震災が起きました。

 沿岸では人口の1割にも及ぶ方が亡くなった地域もあり、しばらくは例会の参加人数が1桁で、討論のグループが1つしか組めない日々は何年も続きました。それでも顔色ひとつ変えず70代から20代まで世代を越えていつも「あはは、おほほ」と声を出し笑い合いながら、愚直に学び合いを積み重ねてきました。そして発災から13年が経過する今年の3月、ようやく震災前の会員数を突破。現在会員数は96名になり、間もなく創立時の念願の会勢が実現します。

 この地域の一番の特長は、世代を越えて関わり合う風土です。いま20~30代の後継者が経営指針の成文化に挑戦しています。毎週のように夜な夜な続く補講には、悩みを抱えた若いゲストも訪れます。まさに17年前の創立時の風景そのものです。また社員だけで学び合い交流する「社員ランチ学習交流会」も地域に定着し始めました。

 こうした変化の源は支部の幹事1人1人が自ら考え、自ら動き出したことです。「自分たちが描いた未来を自分たちの力で実現する」その想(おも)いはどの地域にも決して負けません。

 創立時に一番若かった世代が、次代を担う若手を見守る。世代を越えて一緒に関わり合い学び合う伝統を、私たちがまた次の世代に受け継ぎます。

「中小企業家しんぶん」 2024年 8月 5日号より