同友エコ受賞企業(幹事長賞) 
薪ストーブ事業と自然エネルギーの活用で豊な地域づくりをめざす 
(株)薪来歩 代表取締役 池田卓矢氏(滋賀)

 同友エコ2023―2024受賞企業を紹介する連載。第2回となる今回は、幹事長賞を受賞した(株)薪来歩(滋賀同友会会員)の取り組みを紹介します。

自給自足の生活に憧れて

 (株)薪来歩は2013年に池田氏の個人事業としてスタートし、2022年に法人化。薪(まき)ストーブの輸入販売、卸、施工や体験型宿泊施設の運営が主な事業です。池田氏は自給自足の暮らしに憧れて、2010年に大阪から滋賀県高島市に移住し、セルフビルドで自宅を建て、自給自足のための学びを深めるうちに薪ストーブに出合いました。

 池田氏の大きな転機になったのが、2011年の東日本大震災と原発事故でした。びわこ心援隊として被災地の復興支援に携わったことで、エネルギー依存への危険性と自然エネルギーを見直していくことの重要性を感じました。 2022年に同友会に入会し、すぐに経営指針を創る会を受講。「薪ストーブや自然エネルギーを通じて、火のぬくもりを感じ、豊かな暮らしを提案する会社を目指します」の理念を掲げ、古民家をセルフビルドした体験型宿泊施設『志我の里』を運営し、電気・ガス・水道がなくても生きてゆける暮らしづくりを推進しています。

再生可能エネルギーの活用

 宿泊施設では自然エネルギーを利用した自給自足の生活が学べ、薪割りや農作物収穫などが体験できます。

宿で使用される電気は太陽光発電で賄い、雨水をタンクに貯水しておくことでトイレの排水にかかる水も自給自足しています。

 2022年に実施した滋賀県産業支援プラザの省エネルギー診断では、一般的なホテル・宿泊業の平均年間使用エネルギーが2593MJ/平方メートルなのに対し、同社の体験型宿泊施設は330MJ/平方メートルとなっており、使用エネルギーの64%は太陽光発電やバイオマス燃料で賄えていることがわかりました。

カーボンニュートラルへの取り組み

 同社で販売している薪はすべて滋賀の山々や地域の住民の依頼で伐採した間伐材を使用しています。滋賀の山々に生えすぎている針葉樹を伐採し、広葉樹や他の植物が日光に当たるスペースを確保することで、山の環境保全に取り組んでいます。また地域の課題解決として、地域住民の依頼を受けて、木の伐採を行い、その伐採した木材を薪にすることで、自社事業と地域の課題解決を結び付けています。こうして出来上がった薪を薪ストーブとともに販売・使用することで、カーボンニュートラルへ貢献しています。また、同友会会員企業の(有)橋本燃料と連携し、社用車には使用済み食用油をリサイクルして作るバイオディーゼル燃料を使用し、環境への負荷を抑える取り組みを続けています。

自社事業を通した地域貢献

 池田氏は自社のこれからについて、「(株)薪来歩のスタートから11年が経ち、実績もできてきた。これからはバイオマス燃料にもっと力をいれて、家庭から企業へと自給自足の豊かな暮らしを広めていきたい。高島という地域が豊かになれば、人が集まり、高島の人口減少に歯止めをかけられるかもしれない」と自社事業を通した地域の課題解決を見据えています。

会社概要

設立:2013年
社員数:9名
事業内容:薪ストーブの輸入販売、卸、施工・宿泊施設運営
URL:https://makilife.biz/

「中小企業家しんぶん」 2024年 8月 15日号より