【特集:中同協第56回定時総会in宮城】
創ろう豊かな未来を、育てよう21世紀型企業を 同友会運動の新しいステージへ

7月4~5日、中同協第56回定時総会が宮城で開催され、47同友会と中同協から1099名が参加しました。今回の特集では、開催地あいさつと主催者あいさつ、補足報告とまとめなどを紹介します。

【開催地代表あいさつ】
宮城県中小企業家同友会 代表理事 鍋島 孝敏氏

ようこそ、杜(もり)の都・仙台にお越しいただきました。

本総会のテーマである「創ろう豊かな未来を、育てよう21世紀型企業を~同友会運動の新しいステージへ」は、30年前の1994年に同じく宮城で開催された「中同協第26回定時総会」をリメイクし、テーマの後半部分である「~同友会運動の新しいステージへ」をプラスαしたものです。

宮城同友会としては、本総会を迎えるまでに、2023年5月の第1回実行委員会の開催をスタートに、本総会の設営準備、宮城同友会50周年記念式典、一般社団法人化と怒涛(どとう)の1年となりました。期首会員987名からスタートするという大ピンチの中ではありましたが、本日現在、1050名の会員で全国の皆さまを迎えることができました。

宮城同友会会員一同、中同協とも連携し、今回の総会は「総会らしい総会を」をテーマに準備を進めて参りました。目玉の1つは2日目の大グループ討論です。参加者全員が一堂に会して、80以上のグループを設置します。

総会は、最後の採択まで2日間の全てに参加してこそ、代議員としての役割を果たしたことになります。決して帰らず、明日もご参加くださいますようお願い申し上げ、開催地からのあいさつとさせていただきます。2日間、よろしくお願いいたします。

【主催者あいさつ】
中小企業家同友会全国協議会 会長 広浜 泰久氏

30年前に宮城で開催された定時総会のテーマがリメイクされている今回の総会、私が初めて参加した中同協の全国行事は30年前の宮城総会でした。そのときに強く印象に残ったことが3つあります。

1つは、当時幹事長だった赤石義博さんの「同友会というのは大きな目当てを持って運動が展開されている」という提起を聞いて感動したこと。2つ目は、参加されているメンバー全員同友会が大好きなんだということ。3つ目は、皆さん勉強していてもあまり実践して成果を出していないなと感じたことです。あれから30年の月日が経ち、同友会はその時々のテーマに沿った形で運動を展開し、会勢も伸びて認知度、影響力も大きくなり、発展してきました。

一方で、日本経済は停滞し、「失われた30年」と言われてきました。同友会の発展と日本経済の停滞をどう考えるかが課題です。2023年の埼玉総会で、私は「同友会は新しいステージに入ってきている」とお話ししました。そして、私はこの1年の間に「日曜討論」をはじめとするテレビ番組に4回出演しました。いずれも中小企業の代表として意見してほしいと依頼されての出演でした。中小企業に何か意見を聞くときは、同友会に声がかかるというような立ち位置になってきたと強く感じています。

日本経済はいまだに停滞しています。私たちが各地域、各業界、日本に対してどのような果たすべき使命があるのかということを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。また、本総会においても同友会の新しいステージへと向かう確かな一歩を刻む2日間にしていきましょう。

【補足報告とまとめ】
新たな時代に向けて先頭に立って運動を展開しよう
中小企業家同友会全国協議会 幹事長 中山 英敬氏

大きな時代の転換期の中で激動の時代、激変する社会と言われています。今回の総会の重点課題として3点に整理し、補足説明も含めてまとめます。

1点目は、21世紀型中小企業づくりの第1、「自社の存在意義を改めて問い直すとともに、社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業」になるということです。社会課題や地域課題を自社の課題として経営指針に位置づけて取り組むことが基本です。今、耳にするのは大変な状況の中で社会課題や地域課題どころではないという声です。社会課題や地域課題を自社の課題として取り組むことこそが21世紀型中小企業づくりそのものであり、私たちに託されたことだと感じています。私たちが地域の先頭に立ち、地域との関わりをつくり、地域づくりの中で企業づくり、仲間づくりを一体として取り組むことを実践していきましょう。

また、21世紀型中小企業づくりの第2、「社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ちあい、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業」は、一言で言えば人間尊重の経営の実践です。私たちが企業経営を通して学び続けている労使見解の「経営者の責任」の部分には「労働者の生活を保障するとともに、高い志気のもとに、労働者の自発性が発揮される状態を企業内に確立することが決定的に重要です」と記されています。この自発性が発揮されるようになるためには、社員と経営者の信頼関係が根底になければなりません。信頼関係は常日頃の経営者の姿勢で決まります。やはりしっかりと労使見解を日々実践することです。そして自主・民主・連帯の精神が人間尊重の源と言われています。この自主・民主・連帯の精神は会の運営の考え方、理念だけではなく自社の経営の中でしっかりと企業風土として育っているかどうかです。特に今は時代の転換期にあるからこそ、もう一度同友会運動の歴史と理念を学び直して自社の経営に生かすことが重要です。

2点目は、今後の同友会運動においてさらに力を入れないといけないところが見えてきたということです。私たちは失われた30年を振り返り、これまでの実践と成果、教訓を確認してきました。この30年、同友会の内部的にはそれぞれの運動として成長し、外部からの評価も高まってきたことは事実ですが、ただそれだけでいいのかということです。私たちは国民一人一人を大切にする豊かな国づくりをするという壮大な運動をしています。この30年間で日本の経済はよくなったでしょうか。国民一人一人の生活は豊かになったのでしょうか。むしろその逆で中小企業の数は減り続け、貧困層が増えて格差が広がっているのが実情です。今こそ同友会の壮大な目的をあらためて確認することが、同友会運動の一番の課題です。中小企業憲章と条例推進運動がこれほど求められている時代はありません。この運動に関わっている会員はまだまだ少ないです。私たちがなぜ中小企業憲章や条例制定運動を提起したのかということを今1度学び直すことが大切です。金融アセスメント法制定運動の成果では「私たち中小企業家の正当な願いは連帯して声を上げれば必ず国に届くという確信を持てた」とまとめています。私たちの運動は国を変えることができるということを確認できました。あらためて運動の歴史的背景から学び直すことの重要性を強く感じました。そして、私たちが掲げた「中小企業家の見地から展望する日本経済ビジョン」の実現に向けて政策提言力をもっと高めることの重要性も感じました。共に学び、連携してこの運動を広めていきましょう。

3点目は、今年度のスローガンにも掲げた新しい時代に向けた「同友会運動の新しいステージ」です。新しいステージとは、具体的にどういう姿なのか本日のリレー報告からもイメージが見えてきたと思います。新しいステージへという投げかけは昨日の広浜会長のあいさつでもありましたし、1年前の中同協定時総会の会長あいさつの中でも同友会運動の有機的な展開として述べられた言葉です。その後いろいろな場面でこのことを議題に挙げ、イメージを膨らませてきました。一言で言うと、今まで積み上げてきた同友会運動のさまざまな成果がすべてつながってきているということです。特に各地では地域づくりの素晴らしい事例が芽生えています。1つの例ですが、地域づくりの中で多くの会員が経営指針づくりを実践しながら条例を生かし、地域課題を整理し、学校教育にも入り込んで子どもたちとともに地域の課題を考えています。また、子どもたちと一緒に社会課題、地域課題をどう解決していくかという具体的な活動につながっています。

また、日本を代表する労働者団体と中小企業の経営者団体が一緒になって中小企業振興基本条例を推進して、未来ある中小企業をつくっていこうという連携にまでつながり、すでに有機的な展開が各地で生まれています。共通して言えることは、子どもたちが大人になったとき、今私たちが取り組んでいる新しいキャリア教育、子どもたちと一緒に地域のことを考えるという教育の成果が見えてくるでしょう。それぞれの地域で共に育つ精神で育てていただきたいと思います。

1社1社がどのように有機的な展開につなげていくかと言えば、経営指針と人を生かす経営の総合実践です。人を中心に据え、社会課題や地域課題を整理し、それらを経営指針に位置づけて総合的に実践し、PDCAを回す。実践する会員を増やすことでさまざまな課題が有機的につながり、新しい時代に通用する成果につながっていくということを感じました。もう1つ重要なことは、会員増強の新たな意義です。自然災害が多発化、深刻化し、いつどこで大規模災害が起こるかわかりません。今年も元日から能登半島地震が発生しましたが、半年過ぎても復興どころか復旧すら目途(めど)が立っていないエリアがあります。能登半島の北の方には同友会の会員がいません。もし同友会の会員が何社かでも存在していれば同友会の強い絆や全国の連携で何かできたのではないかと感じました。同友会の会員を地域の隅々まで増やすことは、全国隅々にまで絆の輪を広めることになります。同友会運動を通して地域を巻き込み、地域の人と人との関係性を強くすることこそが地域防災の要になると思います。会員空白地域をなくし、全国の地域の隅々にまで同友会会員を増やしていきましょう。

つくろう豊かな未来を、育てよう21世紀型中小企業を、同友会運動の新しいステージへ向けて共に邁進(まいしん)し、私たちが先頭に立って新しい時代をつくっていきましょう。

「中小企業家しんぶん」 2024年 8月 15日号より