【わが社のSDGs】
理念経営で働きやすく、成長できる会社を実現 
(株)マルブン 取締役会長 眞鍋 明氏(愛媛)

連載「わが社のSDGs」では、経営理念をもとにSDGsに取り組む企業の事例を紹介します。第16回は、(株)マルブン(眞鍋明取締役会長、愛媛同友会会員)の取り組みです。

 愛媛県内で5店舗のレストランを営む(株)マルブンの創業は1923年。昨年100周年を迎えました。 眞鍋氏は大学卒業後、他店で修行し、店舗拡大・商品開発・人材育成を経験、29歳で同社に入社しました。始めは、お店を拡大し、会社が大きくなればいいと思っていましたが、同友会などで経営を学ぶうちに、理念を基に社員を育成しながら会社を成長・発展させなければいけないと自覚するようになりました。会社の理念に共感する人材のみを採用し、社員に自由な発想で働いてもらうことで、結果として定着率は高くなりました。

地域に根差したエコなレストラン

 レストランで使用している食材は、地元の農家から仕入れています。眞鍋氏がゼロからスタートした取り組みであったため、まずは農家を1軒1軒訪ねるところから始めました。うわさを聞きつけた県の職員が「一緒に回って紹介してあげる」と協力してくれたこともあり、少しずつ契約先を増加させ、現在は40ほどの農家と契約しています。農家を応援するために、仕入れる際は値切らないと決めています。

 また、調理で出た廃油を松山市の業者に回収してもらい、バイオディーゼル燃料へとリサイクルしたり、割り箸を廃止してプラスチック製の箸へ変更・オリジナルマイ箸の作製を行うなど、環境に配慮した取り組みを行っています。

 地域との関わりとしては、本店のある小松町を中心とし、各地で料理教室を実施しているほか、特別支援学校での料理教室も開催しており、地域の方々とのコミュニケーションを大切にしています。また、今年から地元の高校3校と協力して、地元の特産品である麦を使った商品開発を行います。

社員満足を重視した育成を

 同社は新入社員が入社すると家庭訪問を行い、ご両親に会社の説明を行います。パートも正社員も参加する新入社員オリエンテーションでは、理念の説明を行い、毎年作成している経営方針書「スタイルブック」でその浸透を図っています。

 また、「ディズニー研修」や「吉本新喜劇研修」などユニークな研修があります。「ホスピタリティ」などあらかじめテーマを決めて研修に行き、テーマに当てはまると思った項目を挙げてディスカッションするというものです。「また来たい」という思いを実感してもらい、お店づくりに生かしてもらうことが目的です。

 眞鍋氏は社員満足を重視しています。伸び伸びと働いて成長を実感できるように、会社ではなく店舗ごとに売り上げ目標を設定しており、自分でタスクを決めてそれをクリアするという形をとっています。「自分で考えて自分が言った意見で会社が改善されるということは、会社の未来に関われるということ。そこが一番社員満足において大事なことだと思います」と眞鍋氏は語ります。

 また、女性が約7割の同社では、子育てと仕事を両立できるような環境づくりを行ってきました。子どもが病気にかかったらすぐに帰ることができる、勉強会は子連れで参加できるなど、パートと社員の別なく、「気持ちよく働ける」職場環境を意識してつくっています。

DXで経済成長を実現

 同社はコロナ禍を機に、スマホで2次元コードを読み取る非接触の注文方法を導入しました。また、売り上げのデータをAIが分析するシステムを活用し、来店客数や各メニューの注文数、売上高が予測できるようになりました。的中率は95%ほどで、1カ月の客数の誤差が1件のみということもありました。結果、食材の発注やシフト調整の精度が高まり、無駄な配置が減ることによる人件費削減で売り上げ・生産性が向上しました。また、各店舗に複数台iPadを支給し情報を集約、社内会議もペーパーレスで行っています。

今後の展望

 飲食業界はいまだに「ブラック」という印象が拭い切れない中、同社はワークライフバランスのとれた環境の整備を進め、社員が生き生きと自分の力を発揮できる企業文化を着実に築いてきました。「世の中の潮流を見て、自社でできることがあればすぐに取り入れていきたい」と語る眞鍋氏。理念を基盤に革新を進める老舗企業の挑戦は続きます。

会社概要

設立:1923年
社員数:19名、スタッフ86名
事業内容:飲食店経営
URL:https://marubun8.com/

「中小企業家しんぶん」 2024年 8月 25日号より