【特集】第5回中小企業サミット

 6月7日に、中同協共同求人委員会が主催する「第5回中小企業サミット」が開催されました。参加者の声を紹介します。

実行委員長 磯村 太郎氏

 コロナ禍真っただ中の2020年に始まった「中小企業サミット」ですが、参加企業も来場学生も大きく跳ね上がった第4回の後任は、大きなプレッシャーを感じるものでした。

 最初にめざしたのは「47都道府県」全参加。共同求人活動の「甲子園」を標榜する以上、外すことのできない目標でした。残念ながら全参加には至らなかったものの、さまざまな方のご協力と心意気で、前回を上回る41都道府県からご参加いただきました。

 企業をお誘いした以上は学生さんにたくさん来場していただかなくてはなりません。250名を目標としましたが、1カ月前の段階で事前登録は20数名…眠れない夜を過ごしました。いろいろな広告宣伝の方法も検討しましたが、結局は足で稼ぐしかありません。東京同友会さんのご協力をいただきながら、5月は授業でのPRに注力しました。結果は141名。何とか格好がついたと思います。

 「学生に会えない」というのが共同求人活動の全国共通の課題だと思います。今回来場してくださった学生さんたちは、ほとんどが授業を聴いてくださった方たち。デジタルに偏り、タイムパフォーマンス(タイパ)を重視し、福利厚生にしか興味がない、そんな偏見が崩れ去りました。対面を求め、真面目に将来を考え、やりがいを求める「打てば響く」若者たちに会えたのが一番の気づきでした。

サン樹脂(株)代表取締役 磯村 太郎(愛知)

参加企業から

 当法人の若手スタッフ2名とともに参加してきました。このイベントには全国の同友会から81社がブースを出展し、関東の大学を中心に140名もの学生が参加されていました。

 地方からの参加企業は都市部と違った地域ならではの特色や、移住し・働き・暮らすことのよさなどを丁寧にPRされていました。驚いたのは、参加された学生さんの意識がとても高いことです。しっかりと将来を見据えた考えを持っておられました。例えば、「公務員や大手企業が生涯安心できるとは思っていない。だから自分に何ができるかを考え、その考えを分かってもらえる会社があるのかを探しに来た」「日本の地域がどんどん活気がなくなっていくことに懸念を感じていて、大学ではコミュニティビジネスを学べる学科を専攻した。人と人をつなぎ地域のインフラづくりに関われる仕事に就きたいと思っている」「フードロスビジネスに関心を持っている。廃棄が当たり前になっている日本の食文化の未来を変えたい」などです。持続可能な社会づくりに取り組む企業で働きたいという意志がとても感じられました。ということは、私たち企業家は、それらに取り組んでいないと選ばれないということだと思いました。

 学生さんは、地方も含めた全国を視野に入れている感じで、「どこで働くか」よりは「どこならやりがいを感じられるか」の意識が強い印象を受けました。若者争奪戦になっている国内の現状を踏まえ、今回参加させていただいたことで企業が若者に選んでもらうための策や、改善すべき自社の課題に気づくことができました。

NPO法人発達障害サポートセンターピュア理事長 檜尾 めぐみ(大阪)


 中小企業サミットは、昨年に続き2年連続で参加させていただきました。参加学生、企業ともに年々増え続け、会場は熱気で満ち溢れ、当日も時間を追うごとに学生の目が輝き、前のめりになっていく様子は「圧巻」の一言。関係者はもとより共に学生と向き合う同友会会員の皆さんに敬意を表します。

 モルツウェルは、ふるさとを守るため、誰もが最期までごきげんな社会の実現のために、島根県松江市に本拠を置いて、日本全国の介護施設へ完全調理済み食材の製造販売、施設給食、在宅高齢者配食、買い物弱者支援、生活支援など社会課題解決型ビジネス、ソフトウェア開発に取り組んでいます。ふるさとを守るためにと考えると、当然、若者たちが働く場をつくること、何よりもっと仕事したい!と思える面白い事業を創出し続けることが圧倒的に重要だと考えています。

 新卒採用を続けると同時に、島根大学の非常勤講師、県教委から委託されて教頭、副校長2年目幹部研修講師を引き受けるなど、少しずつではありますが、若者に強い影響を及ぼすステークホルダーに向け「働くとは?」「働く楽しさ」を語り続けています。

 インターンシップは、学生だけでなく経産省、外務省の本省キャリア2年目職員研修の受け入れをするなど、相互に刺激を受けながら共に育つ苗床づくりを進めています。今後も、地域中小企業経営者の責任を自覚し、地域全体で若者を育て残す活動に全力を注いでまいります。

モルツウェル(株)代表取締役 野津 積(島根)


 今回で4回目の参加となった中小企業サミット。まず感じたのはこの取り組みの大切さでした。それは紛れもなく実行委員長が熱く、具体的に取り組んだからこそであり、今回の参加者数はそのたまものであったと思います。

 沖縄からの参加は決して簡単なものではありません。渡航費用、宿泊、投資時間を考えると気楽な気持ちにはとてもなれません。ではなぜ今回4回目の参加をしたのか。それはとても大きな副産物に出会えることを知っていたからです。

 このイベントは、単なる合同企業説明会ではありません。大きな違いは(1)同じ志の新卒採用を大切にする全国の同友会企業の自社PRを目の前で見ることができる、(2)自分のプレゼンテーションが東京で通用するかを確認できる、(3)全国の同友会企業の経営者同士で貴重な情報交換ができる、(4)Uターン、Iターン、Jターンを希望する学生さんと早いタイミングで出会える、(5)一緒に来た社員の仲間と普段取れない最高のコミュニケーションが取れる。その他にも、想像していなかったたくさんの収穫があるのがこの中小企業サミットでした。

 現在は沖縄に帰って新卒採用へ改めてドライブをかけて奮闘中です。新卒採用こそ、副産物があまりにも多いです。先輩が育つ、会社が若返ったように新しい雰囲気になる、会社の雰囲気・仕組み・悪い慣習を変えるきっかけになる等々。

 来年がまた楽しみです!

(株)琉球補聴器代表取締役 森山 賢(沖縄)


 弊社は、東京都内のビル建築に携わる仕事をしていることもあり、都内大学生との交流を目的として、初回から中小企業サミットに参加しています。残念ながら、まだ宮城県山元町までインターンとして来てくれる学生はいませんが、社員も参加して、なぜ学生が来てくれないのか? 自社や地元の情報発信が不足しているのではないか?といった課題を、サミット参加後に地元行政の方々と一緒に考える機会を設けています。

 その結果、同友会企業や行政と協力し、地域の課題を共に解決していこうという機運が高まっています。例えば、町内の同友会企業が中心となり、統廃合で1校となってしまった山元中学校で、秋に「職業博覧会」を開催する予定です。山元町には高校がなく、中学卒業後は仙台などの高校に進学するため、この職業博覧会が中学生にとって地元の仕事や企業を知る唯一の機会となっています。これから世界に羽ばたく生徒の皆さんに、地元にも帰る場所があることを知ってもらえればと考えています。

 また、地域外のインターン生を受け入れたり、町の交流人口を増やしたりするために必要な宿泊施設が町内にない現状についても、行政や仲間企業と共に取り組んでいく必要があります。中小企業サミットへの参加を通じて、自社地域の課題をそのままにしてはいけないと強く感じました。

 今後も「地域で若者を育て、地域に若者を残す」という理念を合言葉に、よりよい地域づくりに地元の仲間企業と共に挑戦していきたいと思います。

(株)マックス設計代表取締役 成田 建治(宮城)


「中小企業家しんぶん」 2024年 9月 5日号より