【あっこんな会社あったんだ!】経営指針の実践 
経営理念を軸として、業界注目の新業態を展開 
(株)ライトン 代表取締役 竹内康氏(北海道)

 企画「あっ!こんな会社あったんだ」では、企業経営に関わるさまざまな専門課題に取り組む企業事例を紹介しています。今回は「経営指針の実践」をテーマに、竹内康氏((株)ライトン代表取締役、北海道同友会会員)の実践を紹介します。

先行きの見えない苦しい経営

 竹内氏は元々繊維と界面活性剤の研究をしていた研究者。東日本大震災を機に札幌へ移住し、これまでの研究を生かすなら洗濯だと考え、東京の洗濯代行店をまねて「ジャバリン」をオープンしました。しかし、経営の知識はゼロ。赤字の経営状況が続きます。

売り上げアップの理由

 試行錯誤する中で、客数・リピーター率アップにつながったのは、「お客さまと洗濯の情報を共有し、拡散すること」です。洗濯方法の情報提供をしてくれたお客さまにしみ抜きシートなどをプレゼントし、それらの情報からよりよい洗濯方法を編み出し、お客さまにフィードバック。さらに、その情報をSNSで拡散し、より多くの洗濯の情報を集約しました。お客さまの家庭の洗濯の悩みと解決方法を知ることで、徐々に売り上げは上がっていきました。

経営指針研究会で定めた方向性

 SNSでの発信を契機に各種メディアにも取り上げられるようになり、法人向けや旅行者向けの洗濯代行など新たなサービスも導入していくことで経営も軌道に乗ったかに見えました。しかし、スタッフが増えたことで、竹内氏が思い描く方向性とは違う意見が出てきました。 経営の軸が必要だと考えていた折、経営指針研究会の存在を知り、同友会に入会。早速受講し、自分がやりたいことは、洗濯を事業として、便利なサービスをお客さまと共に創造していくことだと考えました。さらに次年度サポーターとして参加することで、ようやく自分の中で納得のいく経営理念をつくることができました。それが、「『洗濯』を最適化することで、快適な生活環境と自由時間を創出し、『みんなの日常』を新しくしていく。」です。

「洗濯の最適化」で日本一のコインランドリーに

 お客さまに最適な洗濯サービスを提供するために考案されたのが、「アラワサッタ」という同社独自の新サービスです。コインランドリー・洗濯代行・クリーニングを複合し、お客さまの要望に沿った仕上がりにするというもので、専門のスタッフが同社のノウハウを駆使することで、通常のコインランドリー代でコインランドリー以上の仕上がりをかなえることができます。

 また、家庭での洗濯を最適化するために、野球ユニフォーム用や漁師用といった用途別のオーダーメード洗剤「アラワサル」を販売しました。

 こうした取り組みが評価され、「コインランドリー店アワード2020年最優秀賞」を受賞しました。

福祉事業への挑戦

 同社は洗濯代行と洗剤製造を外部の就労支援事業所に委託していましたが、委託先は多くの会社の仕事を受けており、繁忙期は同社の仕事まで手が回らないということがありました。また、洗濯という作業で世の中に貢献できるのではという考えもあり、就労継続支援B型事業所「ジャバメート」を設立しました。

 竹内氏は「経営指針実践ゼミ」に参加し、洗濯を通して利用者さんに何ができるのかをあらためて考え直しました。その結果、将来にわたって安心できる居場所を利用者につくるために、(1)洗濯作業を通して仕事を提供し高い工賃を払う、(2)自立に必要な洗濯そのものを提供することに決めました。(1)については、洗濯に関するさまざまな作業の中から自分に合った作業を見つけてもらっています。平均工賃は月約5万円以上で、札幌市や全国の平均工賃より2倍以上のかなり高い水準です。(2)については、仕事として利用者自身の衣類を自分で洗濯するという取り組みを行っており、自立するために必須の洗濯のスキルを身に付けることができます。

今後の展望

 現在は、オーダーメード洗剤の製造を全国の就労支援事業所に委託することをめざしています。洗剤のベースとなる原料は6種類ほどで、レシピがあればどこでも製造することが可能です。委託事業所のロゴをつけた洗剤を商材として売り出し、委託事業所の経営安定につなげていければと考えています。

 また、カレーショップやワイン屋さんとコラボして、カレー染みやワイン染みに特化した洗剤を製造した実績があり、同友会会員のオリジナル洗剤づくりも構想中。

 「洗濯」をキーワードに「みんなの日常」を新しくするため、ライトンはこれからも挑戦を続けます。

会社概要

設立:2012年
社員数:10名
事業内容:コインランドリー、洗濯代行、ドライクリーニング、洗剤販売、就労継続支援B型事業所
URL:https://www.lighten.co.jp/

「中小企業家しんぶん」 2024年 9月 5日号より