【若者に選ばれる企業へ】
社員の自主性を発揮し地域のリーディングカンパニーへ 
(有)長野エーシーエス 代表取締役 田野口 直生氏(長野)

 採用と社内環境改善を一体として取り組む企業を紹介する新連載『若者に選ばれる企業へ』。第4回は(有)長野エーシーエス(田野口直生代表取締役、長野同友会)の実践です。

 わが社は長野県で電気制御盤の設計・製造を行うものづくりの会社です。社員の男女比は6割が女性で、多くの女性社員が元気に活躍しているのが特徴の1つです。私は2009年に入社し、2017年に創業者である父から引き継いで社長に就任しました。長野同友会には2012年に入会し、青年部長や共同求人委員長を経験して、企業の都合で採用していないか、何のために自社があるのかを見つめ直してきました。入社当時16名だった社員数は、現在50名まで増えています。

採用と定着は社長次第

 以前は私1人で採用活動を行っていましたが、業務に追われてなかなか時間が取れないことや相談相手がいないことに悩んでいました。そこで、社内に新たなポストを設け、製造部門で働いていた男性社員に総務として働いてもらうことにしました。現在は、私と一緒に採用活動や社内での調整役を担ってくれており、とても貴重な存在となっています。

 採用活動は、会社の夢に向かうパートナーを増やすという意識で取り組んでいます。そのため、面接の時点から当社のビジョンや方向性、またそれに対する現状と課題まで伝えており、私たちの夢や思いに共感した人が入社してくれています。

 重要なのは、経営者が時代の変化をつかむことです。現在の若者は私たちとはまったく異なる価値観を持っています。そうした若者たちに働きたいと思ってもらえるような環境を作り、経営指針を基に会社の方向性を明確にしながら、それぞれの社員の価値観を生かすことが経営者の仕事だと思っています。

新卒採用の壁

 地元の大手企業が採用枠を増やしているため、中小企業にとって新卒採用のハードルは年々高くなっています。一方で、大手や中堅企業に就職したものの社内でなじめずに早期退職する若者が多く、わが社ではそうした第2新卒の採用が増えています。

 第2新卒や中途の採用にあたっては、入社前に2週間の研修を実施して雰囲気や仕事内容を知ってもらい、自分に合うかどうかを見極めてもらいます。ある社員は「自分は事務職向きだと思っていたが、ものづくりの仕事が合っているかもしれないと感じた。徐々に力を付けて成長できそうな会社だと思い、部署の人たちがとてもよくしてくれたので入社を決めた」と言ってくれました。

 ミスマッチをなくすためにもインターンシップや会社見学などの受け入れが重要になっていますし、若者たちには積極的に活用してほしいと思います。

採用が会社を変える

 「仕事が楽しい」「やりたいことができている」と言ってくれる社員が多く、それは自分の仕事が誰かの役に立っていることを実感しているからだと思います。仕事や人との関わりを通して人生の面白さを感じてほしいと思いますし、そのためには何でも挑戦できる環境を作って社員の背中を押すことが経営者の役割です。

 当社では、自分が着る制服の色を自分で決めるなど、自分で決断する癖を付けるようにしています。それによって社員の主体性が育ち、社内のコミュニケーションも活発になっています。

 採用を続けてきたことでさまざまな社員が活躍し、新たな取り組みにもどんどん挑戦する多様性と変化のある会社になってきました。今後は、さらに多様な働き方を提供できるよう社内整備を進め、社員を増やしながら会社の規模を大きくして、よりよい地域づくりに貢献できる企業へと成長していきたいと思います。

会社概要

設立:1977年
資本金:300万円
社員数:50名
事業内容:電気制御盤の設計・製作、自動機の設計・製作、機械内配線、自動機の改造・メンテナンス
URL:https://naganoacs.com/

「中小企業家しんぶん」 2024年 9月 5日号より